健康・環境

産業革命を起こした歴史ある町・英国マンチェスター

先週は国際会議[*1] の参加・研究発表のために、英国に来ていました。到着したマンチェスターの空港でスムーズに入国を終え、さて市街に向かうのに次の電車が出るのはどの番線 (track) かと隣を振り返ったら偶然、以前からの共同研究でお世話になっている先…

最近のPM2.5研究―COVID-19ロックダウンの影響

●関西 30日も黄砂飛来 花粉症の方は症状悪化に注意(2021年3月、tenki.jp)●北京でほぼ10年ぶりの大規模黄砂、モンゴルでは死者も(同、CNN) 今年も春になると黄砂の問題がニュースで流れてきます。黄砂というと、大気汚染物質としての小さな浮遊粒子PM2.…

加湿器に薬剤を入れて運転することはNGです

2020年春からの一年は、日常の生活空間での「除菌」(*1) に対してこれまでになく関心が持たれる時期だったと思います。昨年の2月末の金曜日に「翌週から小学校などは休業」と政府が言い出し、学校がイレギュラーな長期休みに入ったのが3月1日なので、あれか…

子ども自身の遊びや欲求に社会は応えられているのかね

残り10日を切った2020年。子どもの居場所や遊び場所、彼らにとって学校で何ができたら良いのかということを、今までで一番考えた年だったと思います。 先週参加したオンラインミーティングでは、「放課後すぐに自宅に戻らない子が増え、子どもの放課後の居場…

共著論文発表―妊婦の血液中金属濃度とIgE抗体の関係

子どもの健康のための環境衛生を考える上で外せない研究に、エコチル調査というものがあります。環境省と国立環境研の統括で行われている「子どもの健康と環境に関する全国調査」です。その成果発表に私も関わる機会をいただいた論文が、先月出版になりまし…

ナノ粒子、ナノテクノロジーの "Safe-by-Design"

ナノメディシンの研究をもっとしたいと思う。新奇なナノ粒子をどうしたらもっと安全に有効活用できるかのかを知りたい。と思う。 ナノ粒子はいろいろな疾病の診断や治療に使われるだろうと期待されているが (Choi & Frangioni 2010)(*1)、臨床で安全に使うに…

体温の「コア・シェル」と冷え症のいろいろ

モノの表面と中身で性質の違うことを表す言葉に、「コア・シェル (core-shell)」という語があります。工学分野で言うと原子の並びを超微細なスケールで制御して、ごくごく小さいモノでも表面と内部に機能の違うものを並べたものを作ることがあったり、私たち…

低濃度ディーゼル排ガス曝露の健康影響に対するω-3脂肪酸の防御効果―他国の大学の研究者と共著論文発表

エジプトの研究奨学生を2014年に迎えて以来の研究成果が一つ、新たに出版になります。 Umezawa M, Nakamura M, El-Ghoneimy AA, Onoda A, Shaheen HM, Hori H, Shinkai Y, El-Sayed YS, El-Far AH, Takeda K: Impact of Diesel Exhaust Exposure on the Live…

アミロイドβが凝集してくる局所微小環境のお話@日本薬学会2017.3

昨日まで日本薬学会年会で仙台にいました。 学会では、そう、それ誰もやってないけど面白そうなんだよ、という発表もあれば、それ本当に新しいの? という感じのものや、考えを述べずにachievementだけがひたすら並べられ「それ、どこに創意工夫があったの?…

シンポジウム備忘録-危険(脱法)ドラッグの正体と問題・対策

2016年5月17日、日本学術会議トキシコロジー分科会のシンポジウム「危険ドラッグの正体,現状と今後」にスタッフとして参加していました。 なんというか、すごかったです。中毒患者を臨床現場から見た生々しい話が。当日は、問題点を整理した上で対策まで共…

内山巌雄先生の言葉から感じた研究スタンス

2016年2月17日、第51回FoRAM「日本のリスクアプローチ導入の歴史を紐解く」に参加しました。元公衆衛生院・元京都大学の内山巌雄氏を囲んで、日本におけるリスクアプローチ導入の経緯を知る企画。岸本充生先生の膨大な準備資料を交えた予習の会に始まり、勉…

Nova Publishers "PM2.5本" 発刊と執筆章の公開

『PM2.5: Role of oxidative stress in health effects and prevention strategy』(健康影響における酸化ストレスの寄与と予防戦略)という書籍、2015年7月14日に発刊されました。⇒こちら ⇒こちら(2018年秋にHPがリニューアルされ、古いURLからではアクセ…

「カーボンナノチューブに発がん性」解説のちょっとマニアックな解説

2015年7月31日朝のNHK『おはよう日本』で、カーボンナノチューブ(CNT)の発がん性に関する研究報告の解説がありました。 CNTは、中皮腫を発生したアスベストと形や大きさが似ていることから、環境放出が起こり人が吸った場合の発がん性の可能性が指摘されて…

持ち帰ってほしいのは「次に進む力」ー環境と健康についての市民講座で

私はいわゆる「講義」という形で何かを解説したり、意見交換をしたりすることが多いです。大学院生時代からの指導教授のご配慮もあり、想定より早くに学外でのその機会を、多くいただいたとも思っています。 昨日は中央区立環境情報センター(東京)で、「現…

重い鼻炎、でも抗生剤は…と悩み

重い鼻炎、ひどくなれば副鼻腔炎になるのでしょうが、こんなにつらい頭痛を起こすのかと実感しました。ようやく快復してきましたが。 思い返すと3月23日の週、3歳児が咳かぜで、2日ほど保育園をお休み。はじめ、私が仕事を休むまでには至りませんでしたが、…

“安全を科学する”@フォーラム2014衛生薬学・環境トキシコロジー

もう10日ほど前になりますが、2014年の日本薬学会環境・衛生部会フォーラムは茨城・つくばでした。 『食の安全を科学する』という演題での佐藤洋先生のご講演からは、熱いメッセージもいただきました。 衛生・毒性分野から、リスク評価に資するResearch pape…

【御礼と報告】2014.9.6 シンポジウム「PM2.5とナノ粒子 ―微小粒子の健康影響とその対策を考える―」

2014年9月6日、日本学術会議トキシコロジー分科会シンポジウム「PM2.5とナノ粒子 ―微小粒子の健康影響とその対策を考える―」を開催しました。標題のテーマについて、シンポジウムを企画しながら考えてきたこと、当日感じたことを書いてみたいと思います。 一…

食肉生産の工業化の功罪@「帝国化」した企業

今、松井博さんの『企業が「帝国化」する』いう本を読んでいます。 革新的な製品やサービスが、その利用者の生活だけでなくビジネスの仕組みを変えていく様子が細かく書かれており、「世界ができていく過程」「変わっていく過程」が手に取って分かる面白い本…

ご報告‐シンポジウム「次世代が切り開く胎生期,発達期毒性研究」

昨日、第41回日本毒性学会年会でミニシンポジウム「次世代が切り開く胎生期,発達期毒性研究」、文字通りの「満員」の中で終えることができました。 「子どもの健康」を目標にして、化学物質の毒性について基礎、疫学、臨床の先生方が各々どんなことを考え、…

2014.7.10公開セミナーを開催します

2014年7月10日、私たちの研究センターで公開セミナー『環境と次世代健康科学』を開催します。場所は、理科大野田キャンパス10号館(総合研究棟)です。 ●戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター公開セミナー「環境と次世代健康科学」を開催(7/10)(東京理…

シンポジウム「次世代が切り開く胎生期,発達期毒性研究」を開催します

2014年7月2日に神戸(日本毒性学会)にて、ミニシンポジウム「次世代が切り開く胎生期,発達期毒性研究」の座長を務めることになりました。 座長と企画担当のお話を頂いたときに、まず頭に浮かんだのが「疫学」と「臨床」の研究から1演題ずつ入れたい、とい…

AERAで大気中ナノ粒子の問題が取り上げられました

朝日新聞出版の週刊誌『AERA』2014年4月21日号(同14日発売)に、私たちの研究内容と合わせて、大気中の超微小粒子(ナノ粒子)の問題が取り上げられました。 以下に紹介します。 「危ない排ガス“ナノ粒子”」― PM2.5だけじゃない・大気汚染の深刻な原因物質…

ナノ粒子による気道炎症と自然免疫とinflammasome

2014年3月の国際毒性学会(SOT)で、研究発表をしてきました。ポスター発表会場で、口がカラカラに渇くほど話し続けてきました。発表の場で、意見交換をしてくださった皆様に感謝です。 さて、ナノ粒子の生体影響(毒性)については、吸入したときに起こる気道…

卒業生の論文発表―超音波式加湿器から放出される微小粒子

私が大学院生(2013年3月修了)と、超音波式加湿器から放出される微小粒子を研究した成果が、専門オンラインジャーナル誌 Particle and Fibre Toxicology に受理(アクセプト)されました。➡論文はこちら。 「日常生活と健康」に強い関心を持つ大学院生と取…

PM2.5排出が減ったという新型ディーゼルエンジンのこと

こちらのデータで、東京都のPM2.5の発生源の16%と示されている「自動車排出ガス」。一次生成粒子のうちの40%を占めていると読むこともできそうですが、この大部分は、ディーゼルエンジンからの排気ガス「ディーゼル排ガス」であると思われます。 私は一度、…

ナノ粒子による生体影響 up to date

今週の名古屋での国際シンポジウムNanOEHと、最近の論文準備で使ったり仕入れたりした参考文献を、列挙してみます。 このくらいを踏まえた上で議論はしたいし、関心を持たれる人との考察をどんどん進めたいと思います。ご遠慮なく参考に(なれば…)して頂け…

国際シンポジウムNanOEH6@名古屋に来ています

今週は月曜(昨日)から、名古屋で開かれている「ナノ粒子の職業・環境曝露と健康」の国際シンポジウムに参加しています。 (今朝は名古屋城の北隣にある名城公園を走りながら、発表のリハーサル=つぶやきをしていました。) この会議で発表している内容を…

化学物質はなぜ嫌われるのか

今回も遅ればせながらですが、佐藤健太郎著『化学物質はなぜ嫌われるのか』(技術評論社、2008)を読みました。“薬屋さん”(売る人、作る人=製薬研究者)も薬を使う人も、化学物質のリスクに関心のある人も、よく知っておかねばと思うことがたくさんありま…

大気汚染測定運動・東京連絡会に参加しました

2013年10月5日、以前に告知した(→こちら)大気汚染測定運動の第72回測定報告会に、話題提供の演者として参加してきました。 ※今日の報告書のpp.27-29に、『ディーゼル排ガス・大気中微小粒子の生体影響と測定の意義』という私の原稿が掲載されました。本稿…

消費者製品の安全性評価についての懸念

一部の消費者製品には、新しい物質/未知の物質を環境中に放出するものがあるようです。 現在のところ、人が摂取したり環境中で触れたりする医薬品、食品、化学物質などのリスク管理は、法的にはそれぞれ薬事法、食品安全基本法、化審法(化学物質の審査及び…