PM2.5排出が減ったという新型ディーゼルエンジンのこと



 こちらのデータで、東京都のPM2.5の発生源の16%と示されている「自動車排出ガス」。一次生成粒子のうちの40%を占めていると読むこともできそうですが、この大部分は、ディーゼルエンジンからの排気ガスディーゼル排ガス」であると思われます。
 私は一度、ガソリンエンジンからの粒子を測定したことがありますが、少なくともそこに不揮発性の一次生成粒子はありませんでしたので。

 この、PM2.5の主要排出源と言われ続けているディーゼル排ガスですが。新型のエンジンではPM2.5(微小粒子)の多くが取り除かれていると言われています。その新型エンジンの排ガス中に、どの程度の微小粒子が存在するのか。質量としてではなく、粒子の反応の場となる表面の大きさ(表面積)や個数で見た場合にはどうか。その点をよく知りたいところです。

 たしかなのは、少なくとも質量濃度で見た場合に、ディーゼルエンジンからの粒子の放出は減っているということです。調べてみると、新型のディーゼルエンジンでは、次のような技術が搭載されており、話題になっているとのこと。

 ①エンジン低回転時にも高圧の燃料噴射を行えるようにすることで、燃料の不完全燃焼によるPMの発生を抑えている。
 ②少なくとも大きめの粒子については、捕獲して再燃焼することにより、粒子をNOx(ガス状の窒素酸化物)に変える。その発生するNOxを、吸収(除去)してから排出している。
 ●クリーンディーゼルとディーゼルの違い
 ●クリーンディーゼルの技術

 PM(大気中浮遊粒子)やNOxが管理されてくれば、CO2(二酸化炭素)排出や燃費といった他の要素との、リスク・トレードオフも重要になってくるでしょう。
 ●クリーンディーゼルの真実(前編)―ディーゼルは悪者だったのか?(2008年10月1日)

 ただし、ここで注意書き。
 実際に道路沿いで大気中の粒子濃度を測ってみると、現在でもディーゼル自動車(少なくとも大型の)が多く通るところでは、必ず高濃度になります。少なくとも、PM2.5の中でも特に小さな粒子の濃度を測定した場合には、そのような結果が得られます。
 新型のエンジンでは直径が2.5μmに近い “大きめの” 粒子は除けていて、より小さな “ナノサイズの” 粒子は除けていない、ということなのか。それとも、まだ新型ディーゼルエンジンが普及していない(そもそも大型車は別!?)ということなのかは、少し情報を調べただけでは分かりませんが。

 ディーゼルエンジンからの “ナノサイズの” 粒子の排出は減っているのか、というのが気になるところではありますが。それでも、少なくともPM2.5の排出の少ないエンジンの開発が進んでいるというのは、興味深い動向ではあります。

 ※こちらも参考に⇒PM2.5-健康影響の懸念と数値解釈の注意点(2013年2月16日)

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 上述のディーゼルエンジンの改良の成果もあってか、PM2.5の環境中濃度を見ると、日本全国における平均値はこの10年間でもかなり下がってきています。環境基準の達成率は、まだ低いですが…。
 ※こちらでよく解説されています。⇒PM2.5の基礎情報:その定義と発生源と環境中濃度と健康影響と基準値とYシャツと私(林岳彦氏ブログ、2013年1月18日)

 PM2.5が減ってきた理由はもちろん、ディーゼル排ガスの規制だけではないはずです。しかし、少なくとも都市部のPM2.5濃度の低下に、その規制がある程度貢献したことは事実でしょう。
 この辺りは今でも、自動車業界や環境学の両方でホットなトピックスの一つなので、私も注意して最新の情報をモニターしていきたいと思います。

 ・・・そして、これからまたPM2.5が話題になってしまうこの季節。まずは私も、目の前の原稿を仕上げないと。(頑張ります~)