大気汚染測定運動・東京連絡会に参加しました

 2013年10月5日、以前に告知した(→こちら)大気汚染測定運動の第72回測定報告会に、話題提供の演者として参加してきました。

 ※今日の報告書のpp.27-29に、『ディーゼル排ガス・大気中微小粒子の生体影響と測定の意義』という私の原稿が掲載されました。本稿の1ページ目、3ヶ所の「mm3」(立方ミリメートル)と書いてしまった点は、「cm3」(立方センチメートル)の誤りです。失礼をお詫びしながら、訂正をお願い申し上げます。

 私自身、大気環境中のごく小さな粒子の濃度を、2008年から度々測定しています。その中で最近、様々な研究者や市民の人たちと「継続的な測定こそが大切だよね」という意見を共有するようになりました。
 そういうタイミングで、この会との出会いを頂いたことは大変ありがたいと思っています。

 とはいえ、あくまで私が取り組んでいる課題は、「環境中の物質による健康影響の詳細とメカニズムを研究」すること。それにより、健康リスクをより効果的に減少させるための方法を見出すこと。一方で今日お会いした方々は、私と異なり大気汚染の測定(←精力的に!)を専門にした人たちです。
 専門を異にしながら、同じ課題意識を持つ方々との意見交換は、とても緊張感があり貴重なものでした。

 私からの話題提供は、「ディーゼル排ガス・大気中の微小な粒子と子どもの健康」という題で。

 参考エントリ
PM2.5-健康影響の懸念と数値解釈の注意点
『市民研通信』2013年4月号に「ナノ粒子の健康リスク」
PM2.5-成分解析の今とその意味
岩波『科学』4月号にPM2.5の特集

 意見交換では、実際的で、生活と学術研究とをつなげてくれる多くの質疑を頂くことができました。


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 ①大気環境中に存在するナノサイズの粒子(活性に重要な表面積と比べて、質量が極めてちいさい)を考慮して、大気中の微小粒子の個数濃度で環境基準を設定することは、現在の実社会で可能なのか。その必要はあるのか?
 ②PM2.5(ナノ粒子を含む)の成分と健康影響との関係は?
 ③市民レベルで微小粒子の個数濃度を測定するコスト(時間)は?
 ④二次生成粒子の組成は?
 ⑤発生源対策は? 越境汚染にどのような対応が必要? 日本で取るべき対策は?
 ⑥粒子とアレルゲン(例:花粉)との複合的な作用は?
 ⑦小児が抱える疾患と環境との、実社会での関係は?
 ⑧(私の講演で)ナノ粒子の呼吸器への影響にほとんど触れなかったが、その点はどうなのか?
 ⑨測定機の切り替えによる測定データの継続性の担保は?
 ⑩消費者製品からのナノ粒子の放出は?
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 それぞれに、できる限り答えてきたつもりです。その中で、⑧のご質問をくださった方が質疑応答の後に、「問題は喘息だけじゃないんだよ、(肺を)飛び越えちゃってるんだよ!」とおっしゃっていたのが印象的でした。


 撮影は、今日の会に来てくれた、うちのラボの学生の岡本さん。質疑応答のリストも、彼女が作ってくれていました。感謝!

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 さて、今日の参加者の人たちは、次のようなことなどを報告し、課題提起と対応の模索をされていました。

 トンネルの出入り口付近で風の通りにくい場所などや、トラックターミナルの排気が向けられる地点に、NO2の局所的な高濃度地点が存在すること。住居内のNO2濃度についての、喘息患者宅と非患者宅との比較。見過ごすことのできない測定結果が、多く報告されました。
 便利さの向上と環境悪化の防止とを、どのようにして両立させるか。より効果的な環境測定・監視・規制のコストをどう考えるか。

 環境の保護とインフラ整備との両立は、技術の改良でこそ実現できるはずです。産業・工学を巻き込んだ環境負荷の軽減が進んでほしいと、改めて思うところです。


 ※大気汚染測定運動 東京連絡会
 ※東京公害患者と家族の会
 ※環境影響評価条例環境アセスメント、東京都環境局)