産業革命を起こした歴史ある町・英国マンチェスター


 先週は国際会議[*1] の参加・研究発表のために、英国に来ていました。到着したマンチェスターの空港でスムーズに入国を終え、さて市街に向かうのに次の電車が出るのはどの番線 (track) かと隣を振り返ったら偶然、以前からの共同研究でお世話になっている先生に遭遇。コロナ禍でなかなかお会いできない期間が続いたこともあり、話が弾みました。


 マンチェスターはコンパクトな街。到着した直後の数時間だけでもだいぶ(ジョグで)回れます。


 トラムのある街の景色。


 マンチェスター大聖堂。中の造りが歴史を感じさせると思ったら、1420年代前半に建てられてちょうど600周年ということでした。


 上部のステンドガラスが割と広く、太陽光が多く入るのが珍しいと思いましたがどうなのでしょう。


 Deansgateの運河。大西洋(リバプール側)と運河で繋がっていたことが、18世紀後半以降のこの町の立ち位置を決めたのだそうです。


 マンチェスターは18世紀後半にはすでに、新大陸(米国)から輸入した綿花を絹に加工する工業都市として栄えていました。Arkwrightが特許(1769年)を持っていた絹製造機に、世界で最初に蒸気機関を繋いだのが1781年。もっとも初めは蒸気の力を機械の直接の駆動力にしたのではなく、蒸気の力で汲み上げた水で回した水車の力を使って機械を動かしたのだそうですが、その力は絶大で綿工業の世界的中心地となったのだそう。


 蒸気機関もその使い方もどんどん改良され、19世紀半ばに本格的に製造業に導入。これが産業革命の引き金となったという展示。絹産業が主要でなくなった20世紀後半も、マンチェスターは繊維産業の中心であり続けましたが、

 それだけでなく・・・


 コンピューターの発明に繋がる1948年 "Baby" の誕生も、


 電顕の上市(1936年~)にもマンチェスターは縁があったのだそうです。


 ここまで、入場無料の Museum of Science and Industry(科学産業博物館)にて[*2]。奥に見えるのは、1830年の旅客開業当時の駅舎です。日本の鉄道は2022年に「150周年」を迎えていましたが、英国の方はまもなく200周年!

世界最古の駅舎が博物館(石田正治氏)


 町の西側には、マンチェスターユナイテッドのスタジアム。


 東側には、マンチェスターシティのエティハドスタジアム。このときは静かな朝。水曜(5月18日)の夜にちょうど欧州チャンピオンズリーグの準決勝(レアルマドリード戦)があったので、開始直前の雰囲気だけでも見に来ようとも思ったのですが、時差ボケで夕方過ぎは眠りこけてしまい叶いませんでした。


 サルフォード大学の背に広がるPeel Park。

 帰り際には、マンチェスターから200年前に開業した鉄道路線の行き先であったリバプールに立ち寄ってきました。マンチェスター-リバプール間に鉄道が敷かれたのは1830年とのこと。2022年に「鉄道150周年」を迎えた日本より40年前のことですね。両都市間を結ぶ路線は、200年前の開業当時とは違うかもしれませんが、それでも途中駅のレンガ造りがこれまた歴史を感じさせました。


 終点は、現役で世界最古のターミナル駅と言われる、Liverpool Lime St駅。右は、ロンドン行きのAvanti West Coast高速列車。


 英国名物の、二階建てバスのある景色。


 リバプール大聖堂。


 The Three Gracesの建物を背景に。ビートルズ像(左下)は大人気。

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 さて、今回は2022年初めから飛行機がロシア上空を約30年ぶりに(1991年以来)飛べなくなってから、私にとって初めての欧州渡航でした。マンチェスターの空港に降りるにはイスタンブール乗継が良かったという選択で、乗ったのはターキッシュエアライン。英国には高速鉄道にあたる新幹線がないので、ヒースローから鉄道で入るつもりになれませんでした。どうせロシア上空を飛べない今、トルコ経由もそれほど遠回りにならないだろう、という判断もあり。

 しかーし、西向きの羽田→イスタンブールの所要時間は13時間超。以前はそんなにかからなかったはず・・・。通常なら、13時間あれば羽田から欧州の西側まで着いていたはず。疲れを溜めては意味がないぞと、直前に料金払ってビジネスクラスにアップグレードをしていたのですが、これはきっと正解。羽田でのイスタンブール行きの搭乗口は満員御礼。


 飛行ルートは、偏西風で東向きに飛ぶときかのような南寄り。これはいかん。


 (東アジアで曲がりくねった記録があるのは、悪天候だったから?)

 月曜の未明に着いたイスタンブールでは、久しぶりに「Moscow」行き先も。今(2022年~)、日本からロシアに行くには直行便がなく、中国などでの乗り継ぎのない旅程は存在しなかったはずなので久しぶりに。ただ、帰りのイスタンブール(深夜)ではソチ行きに「Cancelled(欠航)」の文字もあったので、やはり人の行き来は少ないはず。ロシアどーにかしなはれ、という感じです。

 帰りはそのイスタンブール空港で休んでいるときに寝てしまい、起きて時計を見てみたら離陸時刻の35分前。正直かーなーりー乗り遅れそうで危ないところでしたが、何とか遅れることなく金曜夜に帰国しました。出発直前まで小さい人たちと縄跳びをして出発し、帰国翌朝も縄跳びという出張旅程でした。

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●英国渡航準備リスト
・パスポートとそのコピー
・英ポンド、クレジットカード
・PC、スマホ、充電器
・学会発表資料
・プラグ変換器(丸穴2ピンのユーロタイプ(C/B)でなく、英国ではいかつい3本のBFタイプなのを忘れていました・・・)
・服、ランニングウェア・シューズ
・常備薬(痛み止めや絆創膏など)
・洗面用具
※日本から見た英国の時差:
 -8時間(英国は夏時間=DST適用中)
マンチェスターの天気 (AccuWeather)
★日本帰国時の税関申告は➡Visit Japan Webで。

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 [*1] 今回参加した国際会議のテーマは、ナノ粒子の安全性・リスク評価。シリカナノ粒子の表面性状 (Pavan et al., Colloids Surf. B 2022) と生体作用との相関を分析した例や、明らかになる生体作用機序(Halappanavar et al., Small 2021)を活用する方向性の議論、それに比較的新しいトピックスであるマイクロプラスチックの環境問題としての知見(Wright & Borm, Front. Public Health 2022)などを整理するコミュニケーションをとれて有意義な数日間でした。

 [*2] マンチェスターMuseum of Science and Industry の売店で見つけたこの本 "Pt The Periodic Table: A visual guide to the elements" が素晴らしく、思わず購入しました。各元素の物理量や特徴の諸々が視覚的に見やすいカラー図で表されているのが良く、繰り返し開くことになりそうです。