2024年ノーベル平和賞・日本被団協に注目を

 今年、2024年のノーベル平和賞日本被団協日本原水爆被害者団体協議会)に。そのニュースを、最近の世界情勢の報道と合わせて見ていてよく理解しておく必要があると思ったので、ここではこの話題を書いておきたいと思います。

 2024年ノーベル平和賞受賞者の発表は、ノルウェーオスロの現地時間で10月11日、日本では翌12日に報道され、被団協の活動がよく紹介されることになりました。受賞理由は「核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきたこと」。ウクライナ・ロシアの戦争が2022年2月から続いていることに加えて、最近1ヶ月間を見ただけでもレバノンでのポケベルへの爆発物工作、イラン、イスラエルパレスチナの問題、中華人民共和国による周囲の国・地域への威嚇と、世界の複数の地域で軍事的な威嚇や行動が平和を損なうという深刻な問題が起こっている今、核兵器使用のもたらす不幸に光が当てられた意味は小さくないでしょう。いま例に挙げた国のうち、ロシア、イスラエル中華人民共和国核兵器保有国であることも、事態を深刻にしていると言えると思います。
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 ノーベル平和賞受賞決定の犠牲者への報告のため、献花する日本被団協の箕牧代表委員(2024年10月13日、時事通信
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 今は、多くの人がテレビを見ず、ニュースをスマホで見るようになっている時代。その通知がインターネットの閲覧履歴を踏まえて来るために、今回のこのニュースが通知されずあまり見ていなかった、という人も少なくないのではないかと思います。

 しかし、最近の出来事を振り返ると2016年に米国のオバマ大統領(当時)が広島の平和祈念公園を訪問し、2023年には岸田首相(当時)が広島でG7を開催するなど、原爆・被爆に関する大きいニュースはここ10年間でも何度かありました。

 今回のノーベル平和賞のニュースを英語で聴いていて少し驚いたのは、NHKニュースの英訳で「被爆者」には訳がなく、英語でも "Hibakusha" と言われていたことです。この英語がないのは、被爆の例自体が世界的に多くないからでもあるとは思いますが、"Hibakusha" という言葉でその意味が英語圏、非日本語圏の人たちにどのくらい伝わっているだろうか、という懸念を抱いたのも正直なところです。

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 広島・長崎への原爆投下から79年余り、被爆者の年齢の高齢化はもちろん進み、ご存命の方の平均年齢は85ということです。その現状を前に被団協の皆さんは、被爆者が経験した事実を若い人たちに伝えていきたい、忘れずに記憶してほしいと願っています。このニュースを我々は改めてよく知っておくべきではないでしょうか。

 広島の平和記念公園には、私もうちの小さい人たちと一緒に2023年秋に訪問しました。屋根の壊れた原爆ドームが保存されているその公園の雰囲気はやはり独特で、写真を撮るときはいつもおどけているうちの人たちが、このときばかりはこちらが何も言わなくても、硬い表情で写真に写っていたことをよく覚えています。

 その平和記念公園の中心には「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませんから」という言葉があるのは多くの人がご存知のことだと思います。この、過ちを「繰り返しません」の主語は誰でしょうか。それは、G7でここに訪れた各国首脳にはどう伝わっているでしょうか。広島の存在は、世界に(もちろんそれは日本を含むとはいえ)過ちを「繰り返させませんから」、というメッセージを発する力があるはずです。そんなメッセージを発するのも、世界唯一の被爆国である日本の果たせる役割なのではないでしょうか。今回のノーベル平和賞のニュースは、そんな色々なことを改めて考えさせるものだったと思います。