アミロイドβが凝集してくる局所微小環境のお話@日本薬学会2017.3

 昨日まで日本薬学会年会で仙台にいました。



 学会では、そう、それ誰もやってないけど面白そうなんだよ、という発表もあれば、それ本当に新しいの? という感じのものや、考えを述べずにachievementだけがひたすら並べられ「それ、どこに創意工夫があったの?」と言いたくなる講演もあるのが常ですが、京大院薬の松崎勝巳先生の講演が圧巻でした。

 題目は、「神経細胞膜上でのアルツハイマーアミロイドβタンパク質の異常凝集・毒性発現機構」@日本薬学会年会(2017.3、仙台)

 講演の内容は、アルツハイマー認知症と関連すると言われるアミロイドβタンパク質の凝集が、どういう分子との共存下でどういった原理で起こるのかを研究してきた経緯と成果についてのものでした。アミロイドβの凝集性が周囲の微小環境で変わることから、細胞膜上で機能分子が集積する脂質ラフト上の分子の作用に焦点を絞って、研究の内容が紹介されました。
 アミロイドβと他の分子とが互いに弱く引き合う反応を速度論的に解いて、起こる相互作用を物理的に解きつつ、数学的にシミュレーション解析もしてる。つまり、この認知症に関連し得る重要な現象について、in vitroで解いて、実験的にすぐには見えない詳細な現象をin silicoで推定して、それをin vitro実験で検証するという流れが圧巻でした。他にも、標的タンパク質に環境応答性蛍光プローブを化学修飾して、溶解条件を変えたときの培養細胞上での局在や挙動をトレースしたり、周囲微小環境を変えたときのタンパク質の二次構造を光学的に解いたり(CD、FT-IR)。複雑な光学スペクトルをこれまた数学的に解いて、重要な要素をピックアップしてそれで分解 (deconvolution) する流れも参考になるものでした。

 実験→仮説立て→推定→検証実験のサイクルをうまく回して成果を挙げるのは「言うは容易し行うは難し」です。実際に数多ある失敗やハズレをクリアしながら成果を挙げていくためには、多々試行錯誤が必要になることが常かと思います。その講演には、成果の裏にある表に出ない失敗を乗り越えた深みも感じられて刺激を受けました。

 で、個人的にはその先、タンパク質のβシート構造が集まると細胞とか生体組織にどういったことが起こるのかということを、アミロイドβタンパク質に限らずもっと知りたいと思うところです。その辺りも書き留めておきたいことが色々あるのですが、別の機会に。

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 学会中の仙台での食事では、国分町で見つけた石巻港 津田鮮魚店さんの魚介が素晴らしく、他で見たことのなかったものも頂きました。


 ほやの刺身。初めてでしたが味もよく分かり楽しめました。


 あとで調べたところ、卸売さん直営のお店? さすがというものばかりでした。他にも茎わかめの唐揚げとか、たらこの磯辺天ぷらとか。


 最後のお昼には一番町・広瀬通一仙さんで牛たん(1.5)焼き定食をいただいて、元気を充電して帰りました。



 PS. 3月末の月曜の仙台は、朝からみぞれでした。福島~北関東の山間は雪だった様子。新幹線から見た山には雪雲(写真は蔵王~福島)。ただこの日、那須では残念で悲しい事故もありました。亡くなった若者たちのご冥福をお祈りします。