今、松井博さんの『企業が「帝国化」する』いう本を読んでいます。
革新的な製品やサービスが、その利用者の生活だけでなくビジネスの仕組みを変えていく様子が細かく書かれており、「世界ができていく過程」「変わっていく過程」が手に取って分かる面白い本です。
今日は本書の本題ではないのですが、ある章の内容が「もっと知られてた方がいいのでは!?」というものだったので、それについて触れてみたいと思います。
それは、米国に始まった家畜の徹底管理による「食肉生産の工業化」がもたらした功罪です。この「工業化」は、食料調達の低コスト化と均質化を目的として行われ、その目的を一定程度以上果たしてもいる状況です。
ここではこれに関する既存の情報を、先の書籍の注釈で挙げられていたものを中心に並べてみます。
米国での食肉生産「工業化」による変化
●食肉や清涼飲料水の価格低下
"What’s Wrong With This Chart?" (2009)
●米国の食品産業に潜む問題点に切り込んだドキュメンタリー映画『Food, Inc.』
・日本語版
「映画『フード・インク』(Food, Inc.)を観た …レビューはこちらが分かりやすいです。
・英語版
●米国の食事―私たちが食べるものについて知られていないこと
"America’s food: What you don’t know about what you eat" (reviewed in 2009)
●養鶏の食餌中に抗生物質を添加しておくと、鶏の体重が増える
"Subtherapeutic levels of antibiotics in poultry feeds and their effects on weight gain, feed efficiency, and bacterial cholyltaurine hydrolase activity" (1987)
●食牛への成長ホルモンの投与
"Hormones: Here's the Beef" (2002)
●乳牛中の抗生物質の残留
"Dairy Cattle Antibiotic Residue Review" (2010)
●ピザソースは野菜?
"No, Congress did not declare pizza a vegetable" (2011)
●畜産が抱える人権の問題
"Blood, Sweat, and Fear: I. Summary" (2005)
この「工業化」によるコストダウンの結果、その負担はどこに転嫁されているのか。詳細は、はじめに紹介した本を(第4章だけでも)読んでいただければと思います。私にとっては、以前にフォアグラの作られ方を紹介されたときに感じたものに近い衝撃でした。
少なくとも20年前の日本の子どもは、私たちが生き物を食べている(食べなければ生きていけない)ことを教えられました。そしてそれは、生き物を大切にする気持ちとあわせて語られるものでした。が、「工業化」した食肉生産の現場には、それと違う現実があると言っても過言ではないでしょう。
また、どこの大学の学食に行ってもファミレスに行っても、ハンバーグが美味しくない理由。それはやっぱり、“安くて脂肪分の多く、世界的な肥満の増加の原因になっている食材” を使ってるからなのか、と。
こういった食料生産の現実。安価な食料が無くては生きていけない人がいることも事実です。ですが、この食料のデメリットって、私たちからあまりにも見えていないのではないでしょうか。
消費者がもっと、“自分で理解して食品を選べる” ようになってほしいと思います。低コストの意味を市場に問うための方法(簡単な情報共有の仕組み)が、もっとあって良いのではないでしょうか。そう思ってやみません。
●発揮すべきは「高い専門性に裏打ちされた創造性」