発揮すべきは「高い専門性に裏打ちされた創造性」

 松井博さん著『企業が「帝国化」する』を読みました。現代にはビジネスの在り方を変え(慣習を破壊し)、顧客や委託先が離れられない仕掛けをつくり、巨大な影響力を持って「帝国化」していく企業が存在する―― そして、社会は「勝者総取り(Winner tekes all)」の時代になっていく――
 その事実や仕組み、仮説を示した上で、「では(私たちが)どうすればいいのか」を問い直す本です。



 私は2013年12月の大学での講義「これからの薬学生に5つの心得」で、「グローバル化ですけど何か?」と書いてこんなスライドを示しました。





 が、実際に起こっているのは、そんな生易しいものではないんです。「その仕事を担える人」は、それこそ “グローバルに” 雇われるんです。それによって起こること、分かりますよね。
 この本を読んで、改めて、そう、そうだよね、と思わされる部分がありました。

 「交換可能な(雇われ手の)給料はひたすら下がっていく」「逆に交換が難しくなればなるほど給与が上昇します。」
 「(iPodの父を呼ばれた)ファデル氏の代わりはほとんど存在しないのに対し、工場労働者の代わりは世界中に数十億人以上いるのが現実です。」


 そう言うと、おいおいマジかよと言う人もいそうですが、逆に言えば、企業には大量生産の工程を “誰でもできる作業” にすることも求められているわけです。そしてしかも、

 「そもそもファデル氏がiPodを発案しなければ、こうした多くの工場労働者の雇用が生まれることさえもなかったのです。」
 「1時間2ドルで喜んで働いてくれる人が億単位の人数で存在することを忘れてはいけません。」


 あわせてもう一つ、忘れてはいけないのは、結局のところ「帝国化」する企業は、多くの人が欲しがるものを作っているということです。だからこそ、その供給システムを自在に変えられる。
 そしてそこ(“私設帝国”)では、明快なメッセージを語れる実行力の高い経営陣のもと、仕事好きで、土地ごとの多様性を理解し、文化の違いを主張と議論の中で理解し合う人たちが働いている。

 で、そのような企業は確実に社会に変化をもたらす。その善し悪しをどう考えるかは別にして、社会はある方向に変わっていっているのです。そのことを、私たち “若者” はもっとハッキリと認識した方がいいんじゃないかと私は思っています。

 認識した上で、ではどうすればいいのかって?

 そんな時代に身につけて発揮すべきは「高い専門性に裏打ちされた」「創造性(や表現能力)」。それを身につける方法も、本書はいくつか提案しています。提案の一つとしてあった、古典にたくさん触れることという提案には驚きました。が、その理屈もなるほどと思わされるものでした。もちろん、他にもいろいろと。

 夏季休暇中に面白い本を読めて、新学期も頑張れそうです。っと、今日はここまで。

続けるためではなく、終えるために