子ども自身の遊びや欲求に社会は応えられているのかね

 残り10日を切った2020年。子どもの居場所や遊び場所、彼らにとって学校で何ができたら良いのかということを、今までで一番考えた年だったと思います。

 先週参加したオンラインミーティングでは、「放課後すぐに自宅に戻らない子が増え、子どもの放課後の居場所が変わりつつある今、子ども自身が放課後をそもそも『自由に遊んでいい時間』と認識していない」現実があるという報告(*1) にハッとさせられました。

 みんながそうではないだろうけれど、実際の学童の生活を見ていると言い過ぎとは言えないだろうと。学童保育では、自由に遊んで雰囲気を確保できるようにしないと、という問題提起も(*2)。

 
参加したのは「IPA日本支部」のオンライン研究集会「PLAY! 2020」。お世話になっている先生の紹介で初めて知ったのですが、IPAとはInternational Play Associationの略称で、とにかく子どもにとっての遊びの「今」を見つめ直して、子どもに良い環境を提供し続けることを目指した組織のようです。会では、子どもの遊びの機会は妨げられていないか、遊べる権利が守られているかなどについて、試行錯誤と実践結果の分析が共有され議論することがその趣旨でした。

 子ども自身は放課後や休日に、当然自由に遊んで良いに決まっています。それは、大人がそうしたいのとまったく同じこと。実際には大人たちが、その時間のすべてを遊びに使えるわけではないと感じていたとしても、それが子どもの遊びの機会損失を防ぐために今以上に工夫しなくていい理由にはまったくならないのは当然のことです。

 しかし、実際には子ども自身がそうして良いのだ、遊んでいいものだと認識していない割合が小さくないのではないか、ということを指摘する調査報告(*1, *2)。見て衝撃を覚えました。これは、社会の変化の中で子ども自身の生活にも起こってきた変化に、社会が全然ついていけてない、対応できていないということだと思います。

 こんなんでいいんかね。

 
限りなく選択肢のある遊びの色々を経験し、どんな動きや体験をすると自分がどう感じるのかについて多種多様な経験と試行錯誤をすることは、その人が自分自身を幸せにする方法を知っていくために重要なはず。遊びは生きる力を身につけるために重要と言って過言ではないと思います。そして本当は、それを大人は知っているはず。その機会を子どもに保証できなかったら何がオトナだ。そう思います。

 
もう一つ。12月の初めの週末に参加したのは、これもオンライン開催だった「子どものからだと心・全国会議」。
 今年学校が月単位で休校になったときに何に困っているか、心配しているかについて、子ども自身とその保護者を対象に行われた調査結果の報告(*3) に重要だと思うものがありました。

 その一つは、保護者は休校で子ども(小中学生)に心配していることの上位3つが「運動不足」「勉強を教えてもらえないこと」「思うように外に出られないこと」であるのに対し、子どもが学校でしたいことの上位3つには外に出られないことに加え、2番目に「友だちに会えないこと」が上がってくるということ(*3)。

 この事実も、大人が仕事に取り組むことの動機がやり甲斐があることや稼ぐことだけでなく、その場や機会を通して他者と関わりを持つこと自体があり得ることを考えれば当然のことです。運動や勉強だけじゃない。学校では休み時間を含めて「友だちと会えること」や「自由に遊べる時間」が、子ども自身にとって大切だということです。

 実際には子ども自身が「学校でしたいこと」は、義務教育課程の期間の中でも小学1年生と中高学年、中学生とでは大きく違うだろうと思います。しかし、それでも子ども自身が学校で何を含めて大切だと思っているか。子どもたちに必要なのは、運動や勉強だけじゃない。それを時の文科大臣とか少しでも分かって方針を示したり発信したりしてたんかな、と思います。(少なくとも分かって発信していたかについては、正直かなり疑っています。)

 この “からだ心会議” では『子どものからだと心白書2020』も事前に郵送され、中の記事にも興味を惹かれたものがありました。

 例えば、スポーツ指導の場で過剰な水の制限や “指導者” による暴力が根絶できていないこと。多少の暴力や暴言は、スポーツ技術の向上に止むを得ないという考え方が、未だ保護者にも子どもにも刷り込まれており、その解消も目指すべきではないかということ(*4) とか。

 体育の授業は人が継続的に健康をつくる運動を学び、自分のからだを自分で守る知識を得るためのもの。一生を健康でいるために成長に合わせて何をするかを学ぶためのものであり、子ども(青少年)のスポーツ現場におけるスポーツ傷害(故障)はもっとちゃんと予防されるべき(*5) とか。

 「運動」を通した「あそび」を子ども自身が満喫することを妨げることがないよう、もっと明文化して共有されてほしい話だと思います。
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 (*1) 粟原 知子「北陸地方の小学生の遊び実態 ~遊ばない子どもの出現とその特徴~」(IPA日本支部オンライン特別研究集会、2020.12.14-19開催)
 (*2) 吉永 真理「放課後の子どもの居場所」(IPA日本支部オンライン特別研究集会、同上)
 (*3) 野井真吾・鹿野晶子・田村史江ら「速報! コロナ緊急調査」(子どものからだと心白書2020, pp.8-11、子どものからだと心連絡会議・編、2020.12.5出版)
 (*4) 土井 香苗・吉岡 利代「アスリートが声をあげられる未来」(子どものからだと心白書2020, pp.25-27、同上)
 (*5) 米澤 和洋「子どものからだと心の長期育成と学校体育に求めること」(子どものからだと心白書2020, pp.37-39、同上)
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 ※2021年1月追記: 子どものからだと心・連絡会議の『⼦どものからだと⼼に関する緊急調査』の結果報告書も公開されています。連絡会議HPのトップページからダウンロードできます
 報告書への直接リンクのURLは、
http://kodomonokaradatokokoro.com/images/20210119.pdf (PDF)。


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 2020年は3~5月にあった小学校などの休校に、一部の遊具使用の制限もあり。子どもたちが「欲しい」ものに、大人が提供できているものは果たして合っているだろうか、ということを考える機会が多くありました。大人の方も様々な制限や生活・仕事面での変化がありましたが、本当に欲しいものは何なんだっけ、大切にしたいことは何なんだっけと気づきもある時間だったと思います。

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 至れり尽くせりの「おもちゃ」がなくとも、遊具とそれを自由に使える環境があれば、小さい人たちはいろいろな遊びを考え出します。と、この写真をときどき見るうちの小さい人たちは、見ただけなのに昨日もまた大笑い・・・。

 

 早く「やりたい仕事を制限なくできる」ようになって欲しいとも思いつつ、そんな中で、社会活動の制限の中で今年 “流行った” オンライン会議(研究報告会)に12月も2つ参加したところでした。

 手元では絶賛 “論文仕上げ祭り” 取り組み中。精神的な〆切は、長男の小学校が冬休みに入る前まで。今年のラストスパートです。