つくばサイエンスツアー3 ~電池づくりにプラネタリウム

 家で目覚まし時計を触ったりプラレールで遊んだりする5歳児は、乾電池が大好きです。先週つくばに行ったときに、NIMS(物質材料研究機構)の一般公開「『超』のつく材料あります」があることを知り、調べてみると「手づくり乾電池教室」という実験コーナーがあるのを見つけて行ってきました。
 朝は予定より一本遅い電車になり、つくば駅に着いたのは、この日限定の循環バスが発車する10分前。私たちはギリギリで座れましたが、立ち乗りのできないバスはこの時点で空席が残り2, 3つほどしかなく、積み残し多数の超満員でした。


 まもなく並木エリアの研究棟に到着。

 着くと偶然、うちのラボを先月卒業したばかりの卒業生に遭遇。しかも入ってすぐのイの一番に。こういうときに、毎日会わなくなった知り合いの元気な姿を見られるのは嬉しいことです。



 小さい人も実験体験をさせてもらいました。写真にうまく入りませんでしたが、ピンセットでつまんでいるのは、その卒業生がいま通っているラボの「スマートポリマー」というもの。引っ張って変形させても、それをお湯に入れると形が戻るというものでした。形がパッと戻ったときには、小さい人以上に私の方がビックリしてしまいました。


 こちらは「電気が流れると色が変わる新しい材料」の展示。こうやって様々な色が並んでいたり、


 そこに乾電池をつなげると何かが起こると分かったりすると、もう離れられません。前週の偏光と液晶の話もそうですが、光や色(人の目には見えない「色」でもOK)の不思議には私もハマっています。

 しかし何とかここを離れて、最大の目的であった乾電池づくりへ。ずいぶん長い間忘れていましたが、電池は粗いものであれば意外と簡単にできるのですね。簡単に言うと、塩水に1円玉と10円玉があればできてしまうのです。(やり過ぎると1円玉が溶けてなくなってしまいますが。)
 そんな電池が発見されたのは、イタリアのボルタ氏の業績で1800年、もう200年以上も前のことです。二種類の金属を差せば電池になるかもって、なんでそんなことを思い付いたものか・・・。

 そんなことに想いを馳せていたら、私の恩師が理科大の薬学部長をされていたときの学部紹介にあった言葉をふと思い出しました。それは、「論理的に導かれた結論より、偶然見出された現象に大きな発見の芽が隠されていることが多くあります。(中略)予想した通りの結果がでることは嬉しいことですが、大きな発見は少ないようです。」というものです。
 ⇒私が大学で学んだ「実力主義」(2014年2月)

 予想と結果といえば最近、研究の評価を受ける過程で「なんでそんなことをしようと思ったのか」と人に問われたときに、答え方をふと考えてしまうことがあります。といっても、私自身が訊かれた場合には何とでもなるのですが、大学院生が他の教授にそれを問われ、答えはしたのだが教授は納得しないようだったと報告してくる場合には私自身、おそらくそういう学生が感じているのとは別の意味で戸惑っているような気がするのです。
 そんなん、「あなたはやろうと思われないかもしれません。それが、私がそれをした理由です」でえーやん、と思ったり。

 ・・・・・・。話が逸れて長くなるので割愛。

 目的のマンガン乾電池は無事に小さい人の手によって作られ、豆電球が手元で光るのも見ることができました。写真をうまく撮れはしませんでしたが、感激の一瞬でした。



 しかし、これを・・・家に帰る前に置き忘れたらしい。午後はつくばの駅近くにあるエキスポセンターに寄ったのですが。どこまで持っていたかは本人が覚えていたので、センターに夕方連絡したものの見つからず。
 私も悲しい。のですが、5歳児の立ち直りは思いのほか早いものでした。夕食後に歯みがきの仕上げをしながら訊いてみた。作った乾電池を忘れちゃったけど、それでも全部行って楽しかったからよかったかと。「うん」の即答。



 そのエキスポセンターでは、5歳児にとっては初めてのプラネタリウムを観ました。リクライニングの利く軟らかい椅子と暗さとで、小さい人は後半三分の一くらいは寝てしまいましたが、それでも楽しんでいたようです。私も2015年にニューホライズンズが撮影した冥王星の写真をハイライトに、久しぶり(20年ぶり?)のプラネタリウムを楽しみました。
 地球から48億km、光速でも4時間半以上かかる場所から送られた写真は思わず息を飲んでしまいます。
 ⇒冥王星 ニューホライズンズGoogle画像検索)

 他にも、光や地球の展示が素晴らしい科学館でした。


 小さい人は、最近覚えたり見聞きしたものについてずいぶん長い間、ロボットの筑丸くんと話をしていました。自作した乾電池もここでバッグから取り出して話した後、隣のベンチに置いたまま忘れてきてしまったのだそうで。

 作った乾電池はばーばやじーじどころか、母に見せることすら叶わなかった。もちろん、可能であれば持って帰ってきたかった。でもその分もきっと、いや、モノを忘れるほど没頭して得た思い出は心に残り続ける。そう思いたいものですけれど。

つくばエキスポセンター
「地球に行きたい」5歳児とJAXA展示館(2017年1月)
●2017年4月
 初めての「自由研究」は植物とともに
 つくばサイエンスツアー1 ~地図と地理と花めぐり
 つくばサイエンスツアー2 ~光と地面の不思議巡り
 つくばサイエンスツアー3 ~電池づくりにプラネタリウム
 鏡とレンズを通して惑星ツアー
 空気と土の大切さを実感する畑仕事
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 プラネタリウムでの冥王星の写真に魅せられて、数日間探し回ってしまいました。

 冥王星、太陽から遥か遠くにあり未知も溢れていて、その起源についても色々と言われるけれど形は手の込んだ装飾品のような姿なんだよなぁとか、
 ⇒冥王星、探査から1年でわかった5つの事実(National Geographic、2016年7月20日

 地球上からの冥王星観察画像からは、とてもじゃないけど衛星カロンの存在をはっきり見ることはできなかったこととか、そもそも広い宇宙の中の遠く小さな冥王星を探すことができたのは奇跡的な発見なんだとか、なぜなら広い宇宙はごくごく狭い範囲を見るだけでも無数の星(太陽系外の恒星)の光が背景に見えてしまうんだとか。その写真がすごすぎます。
 ⇒冥王星の衛星「カロン」…1978年と2015年の比較写真に驚きの声(らばQ、2015年11月28日)

 こっちも面白い。冥王星では氷結した窒素や一酸化炭素の噴出する火山が、凍った窒素の上に浮いているんじゃないかとか。
 ⇒氷の火山に巨大衛星!惑星でなくなった冥王星の真実16(Gibeon、2016年10月6日)