鏡とレンズを通して惑星ツアー

 先週末にプラネタリウムで「わくわく惑星ツアー」を観て以来、星や宇宙が見たいと言う我が家の小さい人と、この週末は望遠鏡で星を覗き込みに行ってきました。

 私が望遠鏡に触ったのは高校生のとき以来、15年以上ぶり。それでも、顕微鏡その他の光学系に触れながら仕事をし、光軸合わせを考えて奮闘している今の方が、望遠鏡もうまく理解しながら扱えたかもしれません。
(ただねー…*1)



 場所は茨城県西。土曜の好天の一日の後半、夕方に二度ほど嵐が来ましたが20時すぎに空が晴れて、沈む間近の三日月や木星、北斗七星などを見ることができました。太陽の光が後ろ斜めから入る三日月には、クレータがくっきりと。木星は表面の縞と複数の衛星まで。
 他には簡単な見どころの多くない「春の星空」ですが、北斗七星の6番目の星に望遠鏡を向けて見てみました。ココです。


 おおぐま座のζ星ミザールとアルコル
(画像:http://kanes-photo.blog.so-net.ne.jp/2006-03-07から)

 この星は、目で見るだけでも見かけ二重星に見えますが(*2)、そのうちの明るい方の星が「本当の二重星」(*3) であることが、望遠鏡で見ると分かります。しかも、この近くには他にも小さな星がいくつかあり、望遠鏡で見た視野の中にそれらが入ってくるのが見えました。その絵から5歳児にも、少しは「宇宙を覗く」感じを抱いてもらえればと思いつつ。どうかな。

 その7時間後、朝は未明の4時に起きて次のターゲットは金星。金星は3月上旬まで「宵の明星」として夕方の一番星でしたが、2017年は3月23日に内合(*4) を迎えて一番星の座を譲り、早朝日の出前の東の空に見える位置に来ました。5歳児はそれを見たいと。
 それを聞いたときは初め、星を忙しい夕方に見るよりも朝早く起きて見る方がラクかなと思っていました。しかし冷静に調べてみると、4月末の日の出の時間が4時50分ごろ(関東地方で)。となると、星を見られるのは4時20分よりも前で、できれば4時前後に見たいところ。早っ。

 しかし、5歳児はそんな話に怯まず「4時前に起きる」と言う。初めにその約束をしたのは、4月最後の木曜日の翌朝(金曜)。無事に4時に起きて窓から東の空を見ましたが、空は残念ながら雲に覆われこの朝は諦めて再び寝ることになりました。
 翌、土曜の朝。連日この時間に起きることはできずに親子で寝坊。晴天の下すっかり明るくなった朝6時に目を覚ました5歳児は号泣でした。4時に起きられるように21時には寝ようと言ったのに、23時すぎまで寝付けなかったキミが良くないよ(「晴れ」の天気予報にワクワクしていたらしいけど)。

 そんな経緯もあり、ちょうど小さな三日月のような形をした金星を見られて高いテンションで、4月末の日曜日の朝を迎えることができました。この朝(2017年4月30日)は金星がちょうど、見ごろの極大光度を迎えるときであったこともあり見応えがありました。



●続き: 5歳の人たちと7月の星空観察(2017.7)
大接近中の火星に加えて木星・土星が見ごろ(2018.7-8)

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 (*1) レンズの筒長(焦点距離)と観察倍率:
 顕微鏡では、観察倍率を変えるときに対物レンズを交換しますが、この場合は対物レンズを焦点距離が短く「レンズ筒の長いもの」(レンズを対象に近づけるため)に換えた方が倍率が上がります。逆に、ある観察対象を初めに見るときは倍率を下げて広い視野でそれを見渡すために、「レンズ筒の短い」対物レンズで観察し始めるのが常です。
 一方で望遠鏡では、観察倍率を接眼レンズを交換することで変えます。この場合も焦点距離が短いものにするほど倍率が上がりますが、焦点距離が短いものほど目に近い位置に置くためレンズ筒が短くなります。なので、初めに広視野の低倍率で観察対象を視野に入れるときには、「レンズ筒の長い」接眼レンズで見始める必要があるんですね。
 今回ははじめ、いつも顕微鏡で対物レンズを選ぶ感覚で、レンズ筒の短い接眼レンズの方(つまり高倍率)でターゲットの星を視野に入れる操作をしてしまいました。メイン鏡筒とファインダーとの軸合わせも高倍で。こんなに難しかったっけと思いつつ。基本を思い返せばしなかった失敗に少しがっかりするやら、基本を一度忘れた後に思い返した気づきに驚くやら面白いと思うやら。

 (*2) 見かけ二重星: 二つが実際には遠く離れているものの、地球から見てほぼ同じ方向にあるために近くにあるように見えて並ぶ星のこと。ただし、上述のミザールとアルコルは互いの距離が3~4光年と比較的短く、連星である可能性もあるとされます。

 (*3) "本当に" 二重星: 実際に近くに位置し、互いが引き合い回り合っている二重星。連星とも。

 (*4) 内合: 太陽系の中で、地球の内側を回る金星が地球を「追い抜かす」位置に来ること。


 図: Wikipedia「合(天文)」から。