卒業論文(学位論文)の書き方-2

 今年度も修論・卒論のシーズンになりました。「卒業論文(学位論文)の書き方」は、2年前にここに書いてみましたが(⇒こちら)、このうちとくに、

 1) 前提と解決を目指した課題をはっきりと示すこと
 2) 結論を適切かつ簡潔に記述すること

この2点が簡単でないのかなという様子を見て、今日学生の書いた要旨を見ながらこんな図を書いてみました。


(※ ↑クリックして頂くと、大きくご覧頂けます。)

+++

 この図は、もう論文のタイトルは決まっているという前提です。言うまでもなく、タイトルがその論文の「テーマ」ですね。
 その上でまず考えるべきは、「その研究結果から、どんなことが言えるのか/考えられるのか」です(=①)。そして、(実験方法の項以外は)この点を常に置いて論文を書き進める必要があります。
 ここを失敗すると、結果から考えられること(考察)~結論と、研究目的~背景説明とがチグハグになってしまう、ということが起こるのです。

 これを念頭に置いた上で、論文では「なぜそれを明らかにする必要がある(あった)のか」を説明する必要があります。それがすなわち、「本論文で相対する問題」「解決すべき課題」になるんですね。
 「研究の背景」(Background/Introduction)というのは、自分の研究テーマに関して自分の知っていることを羅列すればいいのではないのです。(とはいえ、自分の知らないことは書きようがありませんが。) 自分が知っている情報を使って、「本論文で相対する問題」「解決すべき課題」を明確に示せなくてはならないのです(=②)。

 で、その相対する問題は本質的に何なのか。“どういう場合に” “何がどうなること” が問題なのか。何がすでに分かって/明らかになっていて(既知)、何が未解決/未知なのか。そして、本論文はその「未知」のうちの何を明らかにする・既知に変えるものなのか。(③)
 それを示すことで、①と②とをしっかりとつなぐ必要があります。それができて初めて、論文の要旨、抄録、もしくはその本文が「読んで分かる」ものになるのです。

 逆に言うと、①②③のどれか一つでもコケてしまっていたら、文字が並んでいても何を述べたい論文なのかなんてサッパリ分かりません。

 がんばってくださいませ~。

 <よろしければ、こちらも参考に>
修士論文チェックリスト (2016.2)
論文 "Introduction" の書き方 (2014.4)
大学院で身につけたい研究マネジメント能力 (2012.12)
学術界サバイバル術入門 — Training 8:論文掲載の戦略(Natureダイジェスト2019.5)