一昨日、今年度の修士論文公聴会が終わりました。今日は、その「修士論文の口頭試問で何を示し、どう答えなくてはいけないのか」を書き起こしておきたいと思います。公聴会を終えたときに書くのかというツッコミを受けそうですが、次年度以降の公聴会にも、また、学位審査に限らないレポートのプレゼンとも共通点があるのでということで、終えたばかりですが書いておきます。
口頭試問でとにかく示すべきこと。並べると、次のような流れになります。
①何が問題で、それを解決するために何を明らかにする必要があって、
②そのうち本研究が、何を検証することを目的にしたのか(こちらも参考に⇒論文 "Introduction" の書き方)
③そのためにどういう方法を、他の方法とどういう比較をした上で、どういう考えのもとに採用して、
④どういう結果を得たのか。
⑤その結果を踏まえ、どういう課題が次に明確になり、
⑥その課題を検証するどういう方法を次に採ったのか。
(↑この⑤⑥が考察の筋)
⑦それにより、どういう結果を得たのか
※ 5~7を繰り返し
⑧得られた結果を、このフィールドの先行研究とどう関連付けるか
⑨今回の研究のloose ends(達成できなかったこと)についてどう言い訳するのか(こちらも参考に⇒論文に求められる要件)
⑩一連の結果と考察から導かれる結論
Loose ends、すなわち研究・調査の限界については、学位審査ではあくまで「ここまでは分からなかったが、その前に必須になる知見を示すことができた」という主張を示すことが重要です。もちろん、そう主張できる根拠とあわせてこれを明示することが。逆に、「それは分からなかったので次に~~をやる予定」ですとか「今後さらなる~~が必要と思われる」というだけの説明は、学位審査では意味を持たないと言えるでしょう。
言い換えれば、「分からなかったから、もっと研究が必要」でなく、「~~までは分かったから、***と考えられる」という論述でなければ『結論』にならないのです。結論がなければ、論文の帰結がないということで学位の受けようもないと言えば、このことも理解していただけるでしょう。
質疑応答については、審査員の指摘に対して、手持ちの知見をもとに回答なり反論なりをすること。もしくは、指摘を受け入れた上で、自らの意見を述べること。それがすべてです。これが、学位審査での質疑応答を「defense」と呼ぶ所以でもあります。
「~~まで実験を行いこれだけデータを得たが、~~を検証するには至らなかった。本研究の結果を踏まえ、~~~のアプローチをとることにより、~~~の解明に近づくはずです。」
そう、自信をもって答えればいい。そういうことです。
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修士課程を終えると、一部の学生は大学院を離れます。おそらく、これからも様々な場面でのレポートを、いろいろな形があれど、社会に出て経験することになることでしょう。
限られた時間、限られたリソースで、説得力のあるデータをどれだけ手元に揃え、それをどう構成してレポートという形にするのか。修了生が今後も出逢うであろうそんな場面に、修士論文をまとめるまでの一連の経験が生きてくれればと願うところです。
おつかれさんでした。