フランスでのコミュニケーションで優しい人に囲まれる

 先週は月曜から金曜の早朝まで、国際学会での研究発表のためにフランスに来ていました。学会の開催地はグルノーブルでしたが、パリの友人にも会いに行ってとても濃い時間を過ごしました。グルノーブル-パリ間の移動時間を確認せずに行くことだけを先に決めており、片道3~4時間かかることを知ったときは少し驚きもしましたが、3、4時間でパリに日本から行けることはないのですから、行かない選択肢はなかっただろうと思います。COVID-19のせいで2020年春から2年半の間日本を出られなかった私にとって、フランスに来たのもなんと4年ぶりになってしまっていました。


 ストライキだか何だかでTGVがやや少なく、予期せず乗り継ぎで寄ったChambéry(シャンベリー)の隣のMontmélian(モンメリアン)。グルノーブルの北東、ジュネーブとの間あたりに位置します。周りを山に囲まれていますが、町自体の標高はそれほど高くなく300mほどとのこと。山の斜面はいっぱいのブドウ畑。ローヌ地方「サヴォア (SAVOIE)」のワインの産地ですね。


 シャンベリー北のLac du Bourget(ブールジェ湖)。


 パリも緑の眩しい季節。短く滞在したパリでも早朝には走ってきましたが、そこで遠目に見たのは、


 来年開かれるオリンピック前にと復旧を急いでいるらしいノートルダム大聖堂。直後の学会発表のために早朝に出たパリで、朝7時のTGVに乗る前でも朝走った私エラい。


 こちらはパリから直行3時間でグルノーブルに着くTGV。Gare de Lyonを出発し、1つ目に停まるリヨン空港の駅でAvignon(アヴィニョン)行きと編成を分割して、2駅目がグルノーブルという速達列車。スケジュールよりはばっちり(?) 30分近く遅れての到着になりましたが。


 着いた先のグルノーブル。広々と気持ちの良いJean Jaurèsの大通り。


 グルノーブルの町のあちらこちらで見られるトラム。市街地のきついカーブでも、レールと車輪が擦れて出る金属音がほとんど聞かれません。その性能の高さを感じるスムーズな走りの理由を知りたいトラムです。

 フランスはやはり、何気なくいただいた食事であっても肉の調理具合も味付けも美味しいところです。先月行ったマンチェスターでは、申し訳ないのですが正直見つけられなかった感覚でした。6月で一番昼間の長いこの季節、長く明るい夕方には、食事を挟んで楽しく話し続ける人たちで町は溢れます。その時間はゆっくりと流れるように感じました。初めに頼んだビールが来るのが遅くとも、それに文句を言う人もいません。ビールのひと口目はもちろん美味しいのですが、それ以上に話すことが楽しくその口に文句を言う余裕はないようにも見えました。


 友人と別れ、学会で知り合ったヨーロッパの人たちが帰った最後の夕方には、レストランに一人で入りました。覚えたフランス語(文にはなっていない)を話す私を見てか、隣のテーブルの人たちが「Japonから来たの?」と、日本語(文ではない)も交えて不意に話をしてくれる。私は覚えかけているフランス語を口にして楽しんでみるが、帰ってくるフランス語がちゃんとした文だと意味がまったく分からない。しかしお互いにそんな状態であっても、お互いが何を楽しんでいるかは両者ともわかってやっており楽しめる。言葉はかくも面白いのだと思います。

 お店の人も、私がフランス語の単語で何かを注文しても、フランス語が分かっていないのを分かってフランス語で返答してくれる。そして英語で意味を教えて笑ってくれる。優しい。そういうコミュニケーションのほぼ無かった時期が、ここ最近3年間あってしまったという事実を改めて認識します。そういうある意味危ういコミュニケーションは、私だって20歳そこそこの頃までは怖かったものです(と、もっと早く知るべきだった?)。しかし、怖いなんてことはやっぱりない。人は優しいということ。もっと言うと、優しい人に囲まれるのに自分が何をできるだろうかということ。その現場を一つでも多く体験したいし、周りのまだ小さい人たちにも見せたいものだとも思うのです。

 フランスに来るのは4年ぶりになってしまいましたが、日本語と英語だけでなく、フランス語をもっと知りたいと今回も思いました。しかし、たまたまだが先月のマンチェスターでの学会と今回のグルノーブルの学会で、どちらでもイタリアの若き研究者と知り合いになったので、イタリア語をもっと勉強しないとけないかもしれません。イタリアは、私のまだ一度行ったことのない国の一つでもあるのです。行かねば。

 というわけで私も皆さんも、buon viaggio!

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 しかし、航空機が北に広いロシア上空を飛べないために、日本-欧州(今回はドイツ)間の空路が行きも帰りもこんなことになってしまっています。本当にロシアには、この状況を早くやめていただきたいものです。