言いたいことを言うためにこそ『教養のススメ』

 先月、時間の合間を縫って読んだ本は池上彰さんの『教養のススメ』(東京工業大学リベラルアーツセンター篇、2014)理科大の卒研生にもちょうどいい本だったのでと、研究室に一冊置くことにしたところ、早速の年末年始に卒研生の帰省先へと出張中です。



 「教養」というとエリートぶった硬いもののようにも聞こえますがそうでなく、考えを人に伝える言葉を持つために最低限持っておきたいものなんですよね。ゆるく持ったり経験しておいたりしたいこと。その教養を得るのに大学がどういう場であり得るか、どういう環境が求められるだろうか、ということが対談形式で示されたのが本書です。

 大学の最後にある卒業研究で大学生たちは、「その後」も見据えたプレゼンテーションのトレーニングをすることになります。その過程ではプレゼンテーションをカッコ良くこなすことや、見映えの良いデータを揃えることよりも大切なことがあります。それは、

  • 「言いたいことを自身が明確に把握」し、それを「伝えられる」ようになること

そして、

  • プレゼンテーションが如何に、プロジェクトの前進やそこでの判断に繋がるのかを理解すること

の2つです。

 もちろん見映えも良いデータを収集できる力や、そのための様々な分析技術を理解し使いこなせる力も大切です。しかし、多種多様な業種職種に様々な仕事が「その後」のステージである中で、近い将来どこかで何かしらのプロジェクトに参画していく人たちにとって絶対必要になること。それは、「自身の言いたいことを明確に把握して」「それを伝わる言葉に乗せて発すること」なんですよね。

 そんなことや他の諸々の「大学が整えたい環境」について、『池上彰の教養のススメ』は他国の大学の例とともに具体的な言葉で示してくれる一冊でした。

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 私の手元でも、ラボで今年度の卒研生たちがどう試行錯誤を積める環境を整えられたらいいか。それを考える一年が、一昨日一つ終わったところです。そして今年も、彼らの試行錯誤が実を結ぶものになるよう、新しい仕組みをまた試していくことになります。

 とにかく、卒業を間近に控える世の大学生たちが自身の意見をよりスムーズに自己認識できるようになり、その言語化の様々なパターンの経験を積むことをもっと突き詰めたいと思っています。そしてもちろん、私自身のアウトプットのパターンもアップグレードしていきたい。

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 というわけで、今年も諸々ぶっ飛ぶ勢いの平常運転でいきましょう。