大学院生に伝えたい「学会発表スライドの作り方」(2020.11)

 2020年11月20~21日は、オンラインで開催されたバイオイメージング学会学術集会に参加しました。今回は私も共著での研究発表を4人の大学院生がしてくれたので、いつもの学会以上に準備をする機会がありました。
 大学院生たちの準備を見ながら「学会発表スライドの作り方」としてメモしたこと。そもそもの「プレゼン資料の作り方」にもつながることがあると思うので、残しておこうと思います。

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●1.示したいことは何か(端的に)
(1-1) "What's new??" =何が新しいのか
(1-2)「目的」と「結論」がブレていないか
(1-3) 目的を受けた「結論」を示せているか?
 逆に「目的」が結論につながる表現になってもいるか?
(1-4) 「結論」に最も直結する根拠はどれか

●2.面白いと思ってもらえるか、誰にそう思ってもらえるか
(2-1) その "new" ができると何がどう変わる?
 それが例え小さいものだと思えても、自身で示せる根拠を元に明確に述べる。
(2-2) 既存の方法だと何が問題で、その "new" は問題のうちの何を解決できるのか。(下の5も参照)

●3.初めて見た人にも伝わるか(単語、短文)
(3-1) 語の意味、略号は正確にストレスなく伝わるか?
 どこか見逃したり聞き逃したりしても、ついてきてもらえるか?
 相手にスムーズに伝わるか?(聞き手を置いていかない!)
(3-2) そのモノは何か。その技術は何か。主要なものは必ず伝わるように。
(3-3)「今ある問題点」のエッセンスが、パッと見で正確に伝わる工夫を。
(3-4) スライドでは余白をうまくとる。
 = コンテンツの「島」(かたまり)がパッと見で分からないと、見る方は理解するのに時間を要する。これは聞き手が話についていけない原因になる。

●4.初めて見た人にも伝わるか(図)
(4-1) グラフに付ける情報(凡例含む)は、シンプルかつ十分か
(4-2) 線や矢印のどれが何を指しているか、スムーズに伝わるか

●5.ストーリー構成(課題=「問い」の明示)
(5-1) なぜその問題を解決する必要があるのか
 + どうやって解決しようとした(している)のか
 このセットを意識する。
(5-2) 示していく検証方法~根拠について
・なぜそれを検証する必要がある/あったのか
・なぜその方法、そのモノを使って検証する/したのか
・そこから得られた結論は何か
※大きな目標に至るまでの過程は、この繰り返し。

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 学会参加はそれ自体いろいろな気づきがあるものです。しかしそれ以上に、近くで大学院生たちがしっかりと準備をして研究報告をしてくれることが、今回こちらにも多くのことを気づかせてくれました。

 加えて、本気で試行錯誤して良いもの(資料、発表内容、ストーリー構成)を作る経験がその人自身に、価値ある新しい何かを分析し、思考し、分かりやすく正確に伝える力になってくれるだろう、とも改めて。

 大学院生はあと3年や5年もすると、すべてのプレゼンに多くの時間を割いて準備するわけにはいかない立場にきっとなります。このときはもちろん、最小限の準備でも一つ一つのプレゼンを良いものにしていかなくてはいけません。

 その立場になったときに、大学院で彼らが本気でトレーニングして得た力を発揮してくれれば、私たちゼミのスタッフとしてこれに勝る幸せは、そう無いだろうと思います。

 (そんなことを考え直している間もなく、あと2ヶ月もすると学位審査真っ只中の時期が目の前に来るわけでもありますが。)

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 今回の学会で見せた図の一つ。生きている小動物の肝臓を、近赤外蛍光CTで三次元に見せた絵。この三次元の形をくるくる回しながら確認できます。
 もっと良い絵をとりたい!

umerunner.hatenablog.com