大接近中の火星に加えて木星・土星も見ごろ(2018)

 「2018年7月31日は火星が地球に最接近」ということで盛り上がっているので、ぴょんと実家に帰って望遠鏡で惑星たちを覗いてきました。ちょうど今は、火星より西(南を向いて右)に土星木星、日没直後だと金星も空に広く並んでいるのが見えます。


 はじめに見たのは、西の空に移動していく木星。夕焼けの後、火星が南東の空高くに上がってくる前に、金星や木星が西に傾いていきます。

 「宵の明星・明けの明星」と呼ばれる金星は特別としてもう一つ、星座に入る恒星以外に明るく見える星というといつもなら木星。しかし、火星が地球に大接近した今だけは、火星が木星よりも明るく見えています。


 屋根の左上低くに見えているのが火星。写真右上に見えるのは土星。そのさらに右(西)に、さそり座のアンタレス、そして木星が並んでいますが。

 今、火星の光度はマイナス2.8等。一方の木星はマイナス2.0等前後。火星の方が木星より2倍くらい明るく見えているのです(等級の1の違いは、明るさ約2.5倍の違いを意味します)。火星は木星よりも公転軌道が地球に近いので、地球から火星までの距離は、地球から木星までの距離よりも時期によって大きく変わります。なので、火星の見かけの明るさは木星以上にどんどん変わるということが起こるのです。
 なお、今回の「大接近」の1ヶ月後、2018年8月末には火星の明るさはマイナス2.1等になり、木星と同じ程度になってしまうようです。(参考:国立天文台東京の星空・カレンダー・惑星(2018年8月)」)


 望遠鏡を通して見た火星。デジカメのマウントを合わせていないこともあり、きれいには撮れていませんが・・・

 その火星の姿、感激します。手元にある望遠鏡では、木星にある縞や衛星、土星にある環のような特徴を火星に見ることはできませんが、とにかく、赤い。それが「点」でなくちゃんと円形に。とても明るく、まるで線香花火の先の玉のように見えます。赤茶色の土が太陽に光で照らされている、その姿を想像するには十分な姿でした。

 しかし、火星の見かけの大きさは大接近のときであっても、木星には敵わないようです。
 天体の見かけの大きさは、天球を占める角度「角直径」として表されますが、大接近時の火星のそれは24秒(1秒は1度の3600分の1)。同様に見ごろを迎えている木星土星の角直径は、それぞれ45秒、20秒ほどです。それほどに木星土星は、遠いけれど大きい。逆に木星のように大きい惑星の公転軌道が近くにあると、こちらもその影響をより大きく受けることになるのでしょうけれど。
 なお、地球から見える太陽の角直径は1900秒(0.53度)。太陽より小さい惑星の見かけの大きさは太陽の40~100分の1ほどで、肉眼ではほぼ「点」にしか見えませんが、望遠鏡で数十~100倍以上に大きくしてみればその形が見えることが分かります。


 望遠鏡で見える土星の環は、デジカメでも撮れました。また、土星はいま天の川銀河の中心のあるいて座の方向にあるので、望遠鏡を向けると周り(後ろ)にたくさんの小さい星も見ることができました。



 火星は思いの外どんどん地球から離れてしまいます。赤くて今なら明るい火星の観察、今のうちに是非。

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 ・・・今年の元旦に初日の出を見ながら想いを馳せた各天体の角直径などの話。大接近中の火星の「24秒」というのは、1km先にある直径12cmの円の見かけの大きさに相当するそうです。つまりは点ですよね。
 天体の角直径というと、赤色巨星として有名なオリオン座のベテルギウスのそれは、太陽系から640光年も離れているのに0.05秒もあり、太陽系内の準惑星である冥王星(太陽からの距離は0.00063光年)の視直径0.1秒の半分もあるのだそうです(⇒Wikipedia「角直径」
 その大きさを想像したときは鳥肌立ってしまいました。まぁ、冥王星自体たしかに小さくて遠くて、手持ちの望遠鏡ではまず見えませんけれど。