地球より小さいのにマグマや火山もある木星の衛星・イオとか

 地球には大気があるために月にあるようなクレーターがなく、また地殻変動があるために海底が動くことで、地面も動き、地震が起きてしまいます。地球のような岩石惑星は、岩石からなるマントルと、さらにその内部に金属からなる核を持っています。
 そのマントルや核は岩石や金属といっても、大変に高い圧力がかかっているために、地表(地殻)で見るそれとはだいぶ違っています。岩石は溶融していてマグマとなっていたり、金属も液体であったりするのです(*1)。

 岩石惑星の中で岩石や金属が液体になっている原因は、惑星自体の自重によって内部に圧力がかかっているため、と考えることができます。逆に言うと、地球にはマグマがある一方で月にはそれがないように、内部にマグマのある天体はある程度の大きさを持ったものに限られます。月より少し大きい太陽系の惑星・水星も、できてしばらく(46億年前から数億年間)はマグマを持ち火山活動があったものの、その後は水星自体が冷えて今では火山活動が見られていません。

 が、その水星よりも小さい岩石型の天体で、マグマがあり活発な火山活動を持つものがあるのでした。それは木星の衛星イオ。ということを、つくばエキスポセンターで上映中のプラネタリウム「ハロー、ジュピター」で知りました。このプログラム、見応えがあってオススメです。上映は2018年5月27日まで。


 エキスポセンターの前には、番組紹介のダイジェスト版も流れています。小さい人はプラネタリウムを見た後の帰り際にそれを見つけ、じっと繰り返し見続けているとか。

 イオは、地球から小型の望遠鏡でも観測できるガリレオ衛星のうち、一番木星に近い軌道を回る衛星です。その大きさは直径にして、月(3474km)よりやや大きいくらいで水星(4880km)よりも小さく、3600km余り。水星に満たない大きさでも内部が高温になっていて、岩石の溶融したマグマを持っているのは、巨大惑星である木星の重力の影響、そしてイオのすぐ外側を回るエウロパ(3100km余り)そして太陽系で最も大きい衛星ガニメデ(5200km余り)の重力の影響も受け、イオの内部の岩石が引っ張られて(*2) 摩擦熱が発生しているからなのだそうです。それがイオの内部の岩石を融かし、噴出物を宇宙空間にまで噴き上げる火山まで生んでいると。
 イオの地表には激しい地殻変動はあるために、たとえ隕石が衝突してクレーターができても長くは残らないのだそうです。

 宇宙にある力と、そこから生まれる動きのダイナミックさに驚かされるばかりです。もっとも、木星の周りを回るガニメデの公転半径は107万kmで、地球から月までの距離(つまり月の公転半径)38万kmの2.8倍程度。巨大な木星の周りのその半径の中に、月より大きい衛星が3つも回っているのですから、そりゃ何も起こらないわけはない、ということなのかもしれませんが。しかも、ガニメデのすぐ外側には公転半径188万kmで、水星とほぼ同じ大きさもカリストまで回っているわけで。

 追記: こちらのウェブページで紹介されている、木星の周りでの物理現象やその写真も迫力があります。⇒木星の生命にオーロラも!ロマンあふれる木星の真実20(Gibeon、2016年9月30日)
 木星の質量は地球の318倍で、他の太陽系惑星を合わせた合計と比べてもその2.5倍もあるとか、そのために太陽系の中で太陽に次いで大きい重心になっているとか。金属水素のマントルの対流により強力な磁場と電場を発生していて、その電波は地球にも届いているとか。さらに、木星の巨大な重力が隕石から地球を守っているとか。
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 なお、イオが木星の周りを一周する公転周期はわずか42.5時間であり、10時間で4分の1を回ってしまう計算になります。エウロパとガニメデも公転周期がイオのぴったり2倍と4倍の、85時間(3.5日)に171時間(7日余り)と、こちらも公転速度が速いことが分かっています。これらが木星の周りでの位置をどんどん変えるのを望遠鏡で見たガリレオも、どんなに驚いただろうかと思わされます。

 この2018年3月現在、木星が東の空に昇ってくるのは真夜中0時ごろですが、おとめ座とさそり座の間にあるてんびん座に明るく輝いているのを、明け方にはよく見ることができます。そのすぐ東(左)のさそり座には、赤いアンタレスの近くに真っ赤な火星があり、さそり座をいつもとは違う形に見せています。
 そろそろ明け方の冷えも収まってくる季節。ときどき早朝から星空を楽しみつつ、向こうで起こっていることを想像しては、ワクワクする気分になる今日この頃です。


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(*1) 地球内部のマントルや液体金属からなる核の存在は、地表で観測される地震波の届き方から推定されています。地震波の伝導速度が変わる面は、地球では地殻とマントルの間にあるモホロビチッチ不連続面(モホ面)とか、マントルと核の間にあるグーテンベルク不連続面とか。そんなのありましたね。
 マントルは地殻よりも剛性が高く(つまり硬く)地震波が速く伝わる一方で、核はP波(いわゆる縦波)の伝導が遅いだけでなく横波のS波が伝わらないことから液体なのだろうとか。硬さ(剛性率)と流動性(粘度の逆数)が重要だとか、覚えておこう。

(*2) 潮汐力による。

液体金属の対流から発生する磁場とか
火星、水星、太陽系の衛星の大きさ比べとか