高校で講演・研究交流会(生化若手・中四国支部出張セミナー)

 2016年2月13日、高校生との研究交流会のため神戸学院大学附属高校に行っていました。


 「会下山」は本校所在地で、神戸市兵庫区にある地名。

 大学への進学を考えつつも、そこがどういう所なのかをなかなかイメージできない高校生。大学は、受け身で知識を得ていくだけでは十分でない場所というのが前提としても、実際に大学でどんなことをできるのか、どんな環境に身を置けたら有意義な大学生活になるか。それを知るきっかけを高校生たちが手にしてくれていれば嬉しいと思います。

 よくある大学の説明会など、大学側にとって良い話ばかりが伝えられるイベントでは聞けない話を、今回は盛りだくさんにできたのではないかと思っています。

 今回の企画では私が講演させてもらった後、生化若手のメンバーによる研究・大学生活紹介がありました。
 大学院にも進学した “先輩” がどんな考えを持ち、どんな研究をしているのか。それを高校生が聞いたら、どんな想いを抱くのだろうかと思います。今回紹介された大学生活の例から少しずつでも、高校生が記憶に引っ掛かるものを得てくれていればとも。大学院や研究といったものの存在を、大学に入る前には知り得ないと思っていた参加者も多かったことでしょう。
(私なんかは、大学3年の後半になってもその存在をほとんど分かっていませんでした。その分、先入観なく大学院に入れたという良かった面もあるのですが。)

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 大学では知識を深め、最先端の知に触れ 「専門を極める」 のが大切。それはそうだとして、専門を「どれくらい」極めればいいのかという質問。良い問いでした。

 私はこの問いに、まずはその専門を自分の言葉で話せるようになるのが第一歩、と答えました。まず言葉にしてみて何人かの反応を受けてみないと、自分が手にできた専門の広さや深さは分からないからです。

 一分野の講義の教科書一冊を丸々暗記したとしても、それで一つの専門を極めたと言えるわけではありません。逆に教科書を丸々覚えるのは無理としても(少なくとも私には無理です)、既存の知から自分なりの考えを持ち、自ら動いて何かを作り出すことができれば、専門を手にし、自分の実力を生かすことにつながるはずです。

 ただし自分が手にした専門の広さや深さを、自分で測るのは普通はやはり難しい。なのでまずは、自分が自身の専門を言葉で表現してみて、それで人からのフィードバックを受けられるようになることで先が開け、手にしようとしている専門も拓けると私は思うのです。
 そこでとにかく、自分が感じたことや思いついたことなどを、ふと言葉にしておくのは大切なことだと思うんですよね。

これからを生きる学生に「5つの心得」のウラ(2013年12月15日)

 ただそうしたとしても、自分がこれから何をすることになるんだろう、何ができるんだろう、ということが見えないとき。そんなときは、悩んだり不安を感じたりするのが常だろうと思います。

 ツラいと思うときは逃げることがあってもいいし、一方でこれは何とかしたいと思うことがあったら、すぐに行く先の展望が見えなくても、悩むばかりのことがあっても良いと思います。その悩みを言葉にすることで、また開ける展望もあるわけで。

すべてはつながっている(と後で振り返ると思うことがある)(2013年2月23日)

 本当に、平和と経済発展、インフラと生活環境そして健康、アジアやアフリカ・中東など他国の状況から学べることも、すべてつながっているわけで。

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 あとは、研究がただ知りたいと思ったことを確かめるだけでは十分でなく、「まだ誰も知らない(明らかになっていない)ことを、“知っていること” に変えていくもの」 だという話に少し触れてもらったところで。
 研究が大仰しく堅苦しいものばかりでなく、身近にもある未解決の問題を何とかしたいなぁと思う気持ちも研究の出発点になるということ、研究のネタは日常生活の中に転がっているということ、それを追究するための生涯学習の基礎を大学で手にしてほしいということ。そんなことを高校生たちが、後々思い出すことがあったら嬉しいと思います。



 高校での講演、私にとって初めての経験でした。企画してくれた生化若手の中四国・近畿支部の人たちと、神戸学院大学附属高校の先生方に感謝します。

 ※後日追記: 生化学若い研究者の会 中四国支部での報告は→こちら