薬剤師国家試験で「基礎科目ができない」の意味が分かりません

 新しい薬学科課程。国家試験が大変なことに。分母を試験の「出願者数」としたときの合格率「75%」が “ふつー” になってきました。
 資格の必要な職に就く予定の人が、薬学科学生の何%かは分かりませんが、少なくともそういう予定だったのに国家試験が通らず叶わなかった、というケースが少なからず起きてしまっています。本人にとっても、現場にとっても大変なことです。

 一方で75%といいますが、入った人の7割が途中で辞めずに「薬剤師資格をとれる」というのですから、すごいもんだなと思います。入学時にそれを目指して、ちゃんと薬剤師に適した人が7割もいたんですね、と。

 むしろ、この資格を取ることが大切と6年間疑わずに、最後に取った人が7割。それってすごく高い割合なのではないでしょうか。はっきり言えば、向いてないと思ったときに他の道に進みづらいこと。(その事実がもしあるとしたら)その方が大問題だと、私は思っています。
 10~20代という大切な数年間で経験すべきことは、人によっては「資格のための試験」なんかよりもずっと大切なことがあるはず。もしかして、そういう人はもう、6年制薬学科には入ってこれない雰囲気なのでしょうか? そうであって欲しくないですし、大学はもっと多様なチャンスが転がっている場であるはずです。

+++

 ところで、2014年度末の国家試験では、基礎の点数が足りずに合否ラインぎりぎりだった人がとても多かったと聞いています。この、薬を専門に扱おうとする人が「基礎ができない」の意味が私には分かりません。
 一部の予備校(?)で、公式やゴロなんかで基礎科目の内容まで“覚え”させようとする話を聞きますが(私が学生の頃からそうでした)、そんなことしようとするからいけんのよ、と思います。国家試験直前になると、それに縋りたくなるのかもしれませんが…。

 例えば物質の体内動態。与えられたパラメーターからコンパートメントモデルを描いて、変化量を時間で1回積分すれば物質濃度、2回積分すればAUCが出るわけ。あくまで一例ですが、こういうのは多少物理が苦手でも分かるレベルです。
 なので、そういう計算問題は後回しにして、他の「覚えてればできる問題」を短時間でぜーんぶ(覚えていたものについて)解いた後で、計算問題をたくさんの時間を使ってガリガリ計算して解けば良い。
 だいたい、選択肢だって「公式のよくある使い間違い、覚え間違い」をしてると引っ掛かるものが置いてあるわけです。だから、自身でガリガリ計算して途中で計算ミスをした場合、算出した答えは選択肢にないわけだから回答する前に間違いに気づけます。そうすれば、その問題で減点されることもないし合理的。

 もちろん、物の理(原理)つまり基礎が分からないと上のような計算はできないわけですが、それが分からない人に、仕事としてリスクのある程度以上ものを扱うのは難しいんじゃないかと思います。基礎を感覚として、少しずつでいいので掴めるようでないと。できない人は、扱わないでください薬なんて…と、私なんかは思ってしまいます。
 “歩く辞書”にならず、知識を「つないで」そこから「考えて」対応できる存在が求められているのです。

 「薬剤師」が二極化していくと感じています。その中の人、これを目指す人には、その資格を武器に「どうしたらその価値を自分なりに最大化できるか」を考えていってほしいと思うところです。でなければ、その価値はどんどん落ちていくことでしょう。

 そんな危機感を抱きつつ、薬剤師が広く人の健康のために必要な存在であると信じて、私は学部の外から(勝手に)応援しています。