なかなか「答え」を言わないその理由

 私がラボで、学生に “なかなか答えを言わない” その理由・・・それは、学生の考える機会を最大化したいから。思考停止をさせたくないから。
 これまでは大部分を暗黙の前提にしていましたが、少し明示しておいた方がいいと思って書いてみます。

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 学生には多くの、大学院演習の機会があります(研究経過報告など)。その準備での私からのインプットは、いつも(私の設定する範囲で)最小限です。そしてそれは、意図的にコントロールしているものです。(もちろん、時間的制約に縛られることがあるのも否めませんが。)

 必要なデータや情報を、どうしたら取れるか。どの程度取れるか、取れないか。取った情報を自分がどのようにデザイン(“見える化”)し、どのようにそれを伝えるか。
 それを知り、自身のアウトプットを最適化するノウハウを身につけること。それが大学院演習の究極の(そして、私の理解では唯一の)目標だと思っています。

 なぜ私が、このことを強調するのか。それは、「限られたリソースの下」で良質のアウトプットをできる人は、「多くを与えられた状況」でそれをできる人よりもずっと少ないからです。つまり、リソースが限られた中で成果を上げられることは、それだけで高い希少価値になるのです。

 だから、だから・・・限られたリソースの中で自分が何を考えるか、どれほどのアウトプットをできるか。大学院生には自身のその力をビンビンに感じてほしいし、考えて、伸ばしてほしいと思うのです。
 「そのとき自分は何をできるようでありたいのか」を。

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 もちろん、演習での資料づくりなんかではインデントやフォントの設定・統一…… そのくらいは苦なくこなして、“見える化”をお手のものにしてほしいとも思います。それは、技術で解決できる基礎ですから。そしてその基礎の上に、どうデータを示せるか、図表を作れるか、どう自分で統一感を持って配置できるか。もちろんもちろん、示し方の妥当性も。

 人がそうそう楽しいと思えないことを、楽しくさせてしまうことこそが、私の教員としての仕事です。私自身が、いま戴いているものの豊かさに感謝しつつ。

論文紹介と研究報告のポイント
論文の書き方
論文の書き方-2
論文 "Introduction" の書き方
なかなか「答え」を言わない私