卒業生の論文が受理されました―ナノ粒子による次世代リンパ組織への影響

 仮説は検証できたけど、結果は予想と逆だった等ということ。幸いにも私も、「真逆」を思いっ切り経験することができました。そんな経験をしながら、研究を進めてきたもりぞーさんとの論文が、昨日受理されました。

 Shimizu R, Umezawa M, Okamoto S, Onoda A, Uchiyama M, Tachibana K, Watanabe S, Ogawa S, Abe R, Takeda K:
 Effect of maternal exposure to carbon black nanoparticle during early gestation on the splenic phenotype of neonatal mouse. Journal of Toxicological Sciences (Accepted on June 2)

 「子どものアレルギーの増加に大気汚染が…」という話が挙がることがありますが、報告したのはそれとは逆にしか見えない結果など。この論文の結論は、"exposure of pregnant mothers to CB-NP (carbon black nanoparticle) partially suppressed the development of the immune system of offspring" です。でもその「逆」は、「ある場合には正しい」と言えるようです。そんなことも、今後もっと分かってくるかと思っています。
 一口に “ナノ粒子の健康影響” といっても、どのように場合にどうなるのか。そこの場合分けをしっかりすることが、健康影響への効果的な対策につながるはずです。その場合分けを明確にする研究をしていきたいと、改めて思うところです。

 そのためには、今後明らかにしなくてはいけない部分もまだ数多くあります。しかし、私たちのメインの研究課題であるナノ粒子による次世代影響。その、「次世代のリンパ組織への影響」について初めての知見を世に出せたということで、昨日は嬉しく思ったところです。

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 2、3年前、うちのラボで免疫系に焦点を当てて仕事をする人はいませんでした。そのためなのか(?)、身近な先生に「免疫には興味ない」と言い放たれたことも以前にはありました。この研究の評価についても、「他のラボとの共同研究だから(高く見られているだけ)」と揶揄されたこともありました。
 しかし、それも昨日、武田先生からこんな言葉を戴けて報われたと思います。

 “共同研究として新しい領域に取り組み、それが成果になったことは、大学内の研究交流の良いモデルになった”と。

 まだまだ課題ばかりですが、あくまでも “外で” 勝負できる仕事をしていきたいものです。それが最後に、“身内” の価値も高める形で恩返しすることにつながると信じて。

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