PM2.5-成分解析の今とその意味

 現状は “総量” で管理されている、大気中の微小粒子「PM2.5」。より効果的にそのリスクを管理するために、成分ごとの解析や監視・管理が有効である可能性は高く、今後ますます重要になると思います。これについては、2013年2月の市民講演会の中でも触れました(→議事録)。
 2013年9月の大気環境学会でも、それに関する複数の研究発表がありました。とくに、全国の環境研究所で行われているPM2.5汚染のモニター・発生源の寄与評価の報告が集まっており、いろいろと再確認や発見がありました。

 たとえば・・・

 ①例年、日本でPM2.5濃度が高いのは全国的に春(3~5月)であり、2013年初めに社会的に広く話題になった冬(1~2月)ではないこと。これが、2013年も同様であったこと。(中国では1~2月に高かった。)

 ②PM2.5の二次生成源ともなる「硫酸イオン」は、従来は固定発生源に由来するものが多いと言われていたが、今は国内ではほとんど出ずに、大陸からの越境汚染の一指標になるらしいということ。そのため、PM2.5中の硝酸イオン/硫酸イオン比は、地域汚染の影響の一つの指標となること。(つまり逆に、硫酸イオンが高いと越境汚染の寄与が疑われること。)
 ただし、東京湾沿岸部のような大きな工業地帯は、以前のレベルではないとはいえ今も硫酸イオン(を含むPM2.5)の発生源となっていること。

 ③PM2.5の組成データから、発生源寄与割合を推定する方法があること。CMB法やPMF法といったレセプターモデルという。
 ⇒微小粒子状物質(PM2.5)の発生源解析(ムラタ計測器サービス株式会社、2009年08月25日)

 ④Pb/Znの組成比は、PM2.5に占める石炭燃焼の寄与率の指標になること。V/Mnの組成比は、PM2.5に占める重油燃焼の寄与率の指標になること。

 ⑤環境省自治体によるPM2.5の成分分析の結果が、ウェブ上で公開されているとのこと。
 (例)大阪府2011-12年度データ北九州市2012年度(PDF)環境省2011年度(リンク先の下の方)
(リンク確認は、2013年9月19日。)

 研究報告を聞いていて、現場のデータはやはり “超貴重” なものだと感じました。一方、PM2.5の各測定地点ですべての組成比をモニターしていくのは、今後も(コストを考えると)難しいことでしょう。リスク管理に鍵となる粒子組成を、迅速かつ安価に解析できる方法が見出され、実用化されるといいと思います。