研究計画の立て方-「本質」と例

 昨年12月に学会でご一緒させて頂いた東原和成先生の言葉で、お会いして以来私の心に強く刻まれたものがあります。

 研究計画を立てるときには、「何が現在その領域で本質的なquestionなのか?」を問い詰めること。
 「自分のたてたquestionに対してベストのapproachは何かと考えて、その技術を自分で立ち上げる態度でのぞむこと。」


 なるほどな、と、自戒も込めつつ思うのです。

 話し手が “聞こえの良い” 方法や技術だけを並べて、それに付けたような「目的」だけを述べているとき。それが、こちら(聞き手)の心に響いてこない、という場面を経験したことのある人は、少なくないでしょう。

 そういうとき、聞き手はしばしば次のような疑問を抱くことになります。

 その技術を使うって言ってるけど、それがその課題を解決するのに適っているの?
 その方法を使うことで目指したいのは、本当にその目的なの?
 何かをやりたいことは分かったけど、本当に解決したい課題は何なの?

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 自分の「やりたいこと」が、いつもすぐに実行可能であるとは限りません。むしろ、それがすぐに全部できることは無いと言ってもいいくらいでしょう。

 そうした場合に、どう計画を組み立てたらいいのか。
 私が、“あの日” 以来心がけている流れを、例として示してみたいと思います。

 1) 解決したい「問題の本質」を見定める(自らによく問いかける)。(=自分が研究で何をしたいのか
 2) それに適う方法を、ゼロベースで考える。
 3) 2の中から、限られた資源、身を置ける場所、限られた時間でできる方法を選ぶ。
 4) 3により解決できる問題が、1で見定めた問題の中でどのように位置付けられるのかを明確にする。
 5) それが、そもそもの「問題の本質」の解決に近づけるものであれば、問題なし。そうでない場合には、なぜ方向性が合わないのかを意識しながら、3、2、(1)の順で考え直す。

 ひと言でいえば、明確にすべきは「何をしたくて何をできるか、それで本質に迫れるか」という点なのです。

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 私の場合、3)のプロセスを意識しないと計画をたいてい失敗します。とくに、研究助成の申請で課題や計画を書くときに、何度かそこで失敗しました。
 ここで失敗をすると、(その期間や予算の範囲内で)実現可能性が低いとみなされ、申請が採択されないことになってしまうのです。

 苦手なプロセスは人それぞれかと思いますが、自分が1)から5)まで(もしくは他の何か)のどこが苦手なのか。それを把握して意識することは、計画を立てたり実行したりする上で、重要なポイントであると言えるでしょう。

 なお、東原先生は冒頭の言葉を、ご自身の次のウェブページでも書かれています。

研究計画のたてかた(『化学』2009年1月号に掲載)
研究立ち上げに走った10年間

 本質にこだわり、それを追い切りたいものです。


大学院で身につけたい研究マネジメント能力(2012年12月17日)