研究者としてやっていくには、論文が書けなくてはいけないのか

Q. 「研究者としてやっていくには、やはり論文が書けないと“話にならない”のか」

 この答えは、必ずしもYesではないと私は思っています。論文発表という業績が大きくなくとも、それに代えて余りある業績が他にあれば、その能力を生かして研究者として活躍する機会もあるでしょう。

 しかし、論文という業績がなくても評価してもらいたいと思ったら、「何で評価されたいのか」という問いに対する答えは明確に持たなくてはなりません。

・その問いに応えられる力(最低でも意識と覚悟)
・研究結果を成果としてまとめ、本質を見定め、論文として発表するのに必要な力

 研究者としてやっていきたいと思ったら、このいずれか(本音を言えば、両方)を持てればいいのではないでしょうか。

 逆に、少なくとも一つの研究プロジェクトに2年間身を置いても論文を一つも書けないのであれば、アカデミックポジションでの研究者という仕事(つまり、研究業績で評価される仕事)以外に就くことや、研究の場所を大きく変えることを考えた方がいいでしょう。
 (2013年1月1日追記:パフォーマンスが同じでも、その評価は身の置き場によって大きく異なるのですから。)

+++

 さらにこれに、二つ付け加えたいことがあります。

 ①研究に係わる仕事に携われるチャンスは、研究者・研究職だけではありません。視野は広く持ちましょう。
 ②自身が今いる場所に向いていないと思ったら、思い切って居場所を変えましょう。単なるその繰り返しになっては効果はありませんが、「次に自分のしたいと思う仕事は今と違う仕事かもしれない」と思って過ごしていると、少し世界が違って見えることと思います。

 論文発表に限らず、少なくない研究者はもっと「誰にどう伝えたいのかという目的に合った伝え方」をできると、展望が大きく変わるのではないかと感じています
(自省も込めて)。少なくとも、そう感じる場面を、数多く見てきました。(正確には、研究者に限った話ではありませんが。)
 個人的に、この「伝え方」にこだわれる人間ではありたいと思っています。行動は、変化やインパクトを及ぼしてこそ意味があると思いますので。


博士課程で特別研究員(学振)として活躍するために(2012年4月23日)
勝負したいことで勝負できる所へ(2013年8月1日)
研究者としてやっていくのは大変なのか(2014年5月6日)