第29回FoRAM参加記録-リスクの問題と科学コミュニケーション

 2012年10月17日、第29回リスク評価研究会(FoRAM)(@産業総合研究所・つくば)に参加してきました。今回は、リスクの問題をコミュニケーションに焦点を当てて講演を聴講・議論する会でした。
 講演者は、横山広美先生、佐野和美先生、小笠原啓一先生の3名でした。

 横山広美先生東京大学)のご講演は、科学コミュニケーションの経緯と現状から、大型科学の政策に係わる世論形成の課題について。
 科学技術に関する公共的な意思決定に際する「市民参加」と「専門知」のバランスについて、波理論「科学論の第3の波」の話が(その是非は現在議論が進行中ということですが)興味深いものでした。

科学コミュニケーションと「第3の波」(2011年7月17日)

 “大型科学の政策と世論形成・そのリスク”については、リスク評価を「あとで見直せばいい」と割り切って、どんどん(根拠とともに暫定的にでも)結論を出し、「以前のリスク評価を再評価する、もしくは見直す」経験を蓄積してほしいと私は感じました。
 この辺りの問題については、どんどん実践とフィードバックを許される範囲でしてほしいというのが、私の考えです。

 佐野和美先生(国立環境研究所)のご講演は、週刊誌による原発報道の検証と、環境研でのリスクコミュニケーション研究への取り組みについて。放射能による健康影響についての週刊誌報道は、正直なところ怖くて私には見ていられない部分が多かったので、とても勉強になりました。

週刊誌の原発報道とどうつき合うか(2011年5月24日)

 講演中の、「いったん出てしまった誤情報が残ってしまうことの弊害にどう対処するか」という問題提起が、難しくかつ重要なものとして、印象に残りました。詳細は、さらに成果がまとめられ論文でご発表されるときを待ちたいと思います。

 小笠原啓一先生(産業総合研究所)からは、討論型世論調査の解説と、これにファシリテーター/モデレーターとして参加をされてのご報告。
 今日の聴講に辻信一先生もいらっしゃっていたので、質疑応答の中でコンセンサス会議と討論型世論調査との違いなども解説され、とても勉強になりました。
 討論型世論調査は、結論を得たり合意形成を目指したりするのではなく、情報提供とその後の討論(熟議)を通して、人の意見や態度がどのように変化するのかを調べるためのものであること。提供される専門的情報の中立性には検討の必要があるものの、人が多様な意見をもつ他者と討議することによる意見の変化を知れることが、この調査の意義であるということ。なかなか興味深かったです。

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 この研究会のウェブサイトには、以前の講演スライドにも興味深いものがいくつもあったので、このブログの関連ページに追記の形でリンクさせていただきました。

えっ、飲用水道水に医薬品!?(2009年11月16日)
辻信一先生の「化学物質管理政策」講義(2012年5月25日)

 以上、備忘録的な記録ですが。この研究会には、また機会を見つけて参加したいと思います。