私が高校生だった時分のある日、高熱(ただの風邪か疲れ)で病院に行き、生食の点滴を受けていました。熱にうなされながらも楽になってきた私に、S医師(実家近くの町医者)が私に訪ねました。
大学はどこを目指すのかと。
私は、学部は決めていないが環境と健康との係わりを学べるところに行きたい、と答えました。
するとその医師は、それがいいよと。その人自身は病気から人を救うために医師になったが、今だったらそのために環境を学びたい、とも言ってくださいました。
それが、私の大学進学の唯一の動機になりました。
大学4年のときに、研究室に配属されました。入学時から目指していたT教授(イニシャルにする必要はないのですが、他に合わせて)の研究室に入ることができました。
大学3年のときから就職活動をしていましたが、就職しても、私が大学進学の動機を全うできないと感じました。それ以上には就職する動機を持てず、大学院に進学することにしました。
大学を出でも思うように仕事をできないことは、屈辱でした。なぜ多くの理系大学生が大学院に進学するのかなんて、理解できませんでした。
大学院でいろいろな人と話をし、いろいろな人の事情や論理を知ること。それが私の大学院進学の唯一の動機でした。T教授にそれを伝えると、「おー、それはやらせてやるよ~」と即答をいただき、それを信じて進学しました。その後、T教授はその機会を本当に多くくださり、私を鍛えてくれました。
初めて学会で研究発表したのは、修士1年の冬(1月)。自分の主張を、自分たちのデータに乗せて伝えられる喜びを実感し、博士課程進学を決めました。
それが、「大学を出でも思うように仕事をできないことを屈辱に」感じた1年半後のことです。
博士課程2年の初夏の学会で、生化若手のYさんと知り合いました。Yさんと私のそれぞれの上司どうしが、昔の仕事仲間だったそうです。
その年の晩秋に、基礎研究の支援事業もやり玉に挙げられた事業仕分けがありました。Yさんのご案内で、テレビの取材を受けることになりました。(決まったのは前日の夜!)
取材内容の放映された番組では、他の若手研究者Kさんが取材に答えていた内容が、私の次に放送されました。そのご縁でKさんから半年後、「メディア取材を受けるときの注意点」についての勉強会にお招きいただきました。
勉強会に参加した帰りに、科学ジャーナリズムのご研究をされているT先生にお声掛けいただき、名刺交換をしました。
その1年後、T先生が主催者の1人として開催された、「科学を伝える作法を学ぶ」ワークショップへのご案内をいただきました。これに参加したときに、N先生に出会いました。
そのさらに1年半後、N先生が理科大にいらしてくださいました。ちょうど、研究成果の発表の仕方に悩みのあった私は、遊びに来てくださっただけのN先生にお願いし、研究成果や、そこから得られる情報の伝え方・活用の仕方を考える臨時ゼミを開きました。
そのゼミ中のN先生の発案で、私は薬学・毒性学の分野に身を置きながら、リスクコミュニケーションの研究をさせていただけることになりました。この研究の途中で、N先生からUさん(もはや、イニシャルにする必要ないかも…)をご紹介いただきました。UさんはT教授とお仕事でご縁を持ったこともあったとか。
そこで先日、岩波『科学』に論文が掲載されたときには、Uさんにもこれを送付させていただきました。
そうしたところ、Uさんがそのテーマを題材にした市民講演会を企画してくださいました。今日、それを終えたところです。
私にとって、今日は初めての市民講演会での登壇でした。来てくださった人それぞれに少しずつでも、分からないことの理解や、いま何が誰にも分からないのか(技術的な限界など)の情報を、示せていたらいいと思います。たくさん頂いた質疑が嬉しいものでした。
私が学生のときから応援してくれているkamomeさんも聴きに来てくださり、初めてお会いすることができました。写真は、kamomeさんから今日いただいたLEDライト。
とても嬉しいものです。ライトは1つ、災害対策として持っておきたいと思っていたところでしたし、出張にも重宝しますし、それに何より、そのお気持ちが。
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私が「環境」と「健康」、とくに「免疫」に興味を持って大学に来たのは、私自身がアレルギーで皮膚が弱かったからでした。その後、母が子宮の手術をした直後に、大学院で内膜症の研究課題をもらいました。うつ病で亡くした友人もいます。その後に、中枢神経系のデータを扱う研究課題もいただきました。
いろいろな研究に触れる機会をいただきましたが、私の研究スタンスは今後も変わらないと思います。
そして昨年、リスクの考え方・捉え方・伝え方の研究を始めたところで、今はPM2.5の問題。仕事をいただけるのは、とても有難いこと。でも、本当は、本当に平和と健康が一番でそれが訪れてほしい。それこそを手に入れたいと思っています。
初心を忘れずに、初心を大切に。そこから今日まで、すべては今、確かにつながっていると思います。
そして次に、どこに行きたいのか。病気を予防したいですし、あっと驚くものを作りたい。
皆さんの応援が私の力です。応えられずに悔しい想いを抱えることもありますが、いつもいつも感謝です。
またお会いしましょう。
●奇跡の上に生きている(2014年9月15日)