太陽が描く“8の字の曲線”

今日、twitter@cometwatanabeさんが
紹介してくれた画像を紹介します。

For the launch(2009年6月14日)
 -周極星とスペースシャトル打ち上げ台
アナレンマ2009(2010年1月18日)

「アナレンマ」は、太陽の位置を同時刻に
記録すると得られる、天球上の曲線のことです。
そして、その曲線(軌跡)は、リンク先の写真ように
8の字を描きます。

これは、なぜでしょうか。(→答えは後半に。)


なお、上の写真はどちらも東山正宣さんが
撮影されたものです。
今日の朝日新聞の朝刊1面には、同氏の撮影した
「太陽の前を通過する国際宇宙ステーション(ISS)」
の写真が掲載されました。

ISSは移動速度が非常に速いため、
太陽の前を通過したのは1秒間余りであったそうです。
素晴らしい写真ですね。

ISS、太陽の前を通過 観測わずか1秒
 (2011年3月4日、朝日新聞

@cometwatanabeさん曰く、
「天文ファンにとっては見慣れていても、
 それを自分で撮影するスキルを持ち、
 記事付きで一般の方に紹介する科学記者が、
 この日本にいることを誇りに思う。」

その通りだと思います。

さて、以下には「アナレンマ」について、
これが見られる理由などを解説してみます。


この「アナレンマ」、皆さんはご存知でしたでしょうか。
私は知りませんでした。
今日の夕方家に帰る道で、これが起こる理由を
ずっと考えていたのですが、はっきりとは分からず・・・。
しかし、

「日の出や日の入りの時刻が一年で最も早い/遅いのが
 夏至冬至から少しずれている」

ことと関係はしているのかな、と想像していました。
それは、おおよそ合っていたようでした。

毎日「同時刻」に撮影した太陽の位置が
左右(東西)に少しぶれることは、
日の出や日の入り、太陽の南中時刻などのズレと
連動することはお分かりいただけるかと思います。

問題は、このズレがなぜ生じるのかということですが、
その理由は、おおまかに言うと次の2点になります。

1) 地球の公転軌道が正円ではなく楕円であること。
 (地球が、太陽の周りをわずかにつぶれた円を描いて
  回っていること。)
2) 黄道面と赤道面とが一致していないこと。

以下、この2つをもう少し詳細に説明します。

1)
地球は、北半球が夏のときに太陽から最も遠く、
北半球が冬のときに太陽から最も近くになるような
楕円軌道を描いて太陽の周りを回っています。
このように楕円軌道を描く地球の公転速度は、
太陽から最も近いときに速く、遠いときに遅くなります。
(この法則は、ケプラーの第二法則といいます。
 そして、この差が顕著に見られるのが彗星の公転です。)

つまり、地球の公転は夏(北半球で)の間は遅く、
冬の間は速いのです。
この要因により、太陽の日の出・南中・日の入りの時刻は
夏の間は1日ごとに遅くなり、冬の間は逆に早くなる方向に
ずれていきます。

2)
太陽の天球上の見かけの位置は、夏至冬至のときには
毎日真東の方向に動いていきます。
一方、春分秋分のときにはこの動きに23.4度の傾きが
あり、毎日少し北、もしくは南に傾いた方向に動きます。
そのため、太陽が天球上において東の方向に移動する
速度は夏至冬至に近いときには速く、逆に
春分秋分に近いときには遅くなるのです。

これらの要因による太陽の見かけの位置の東西のずれを、
「均時差」といいます。
そして、この均時差によって前半に紹介した
アナレンマという現象も見ることができるのです。


均時差やアナレンマについては、以下のウェブページにも
解説されていますので、是非ご覧ください。

こよみのページより
冬至は一年で一番日の出の遅い日か?・・・均時差の話
太陽の描く曲線、アナレンマ
Wikipediaより
アナレンマ
Anelemma

Wikipediaの英語版の方では、地球以外の惑星では
アナレンマがどのような形になるかも書いてあります。

・水星
 水星での“1日”は水星での“2年”に相当するので、毎日プロットしていってもアナレンマは描けないが、計算上では東西の直線を描くといわれている。
・金星
 長円(楕円)形になる。しかし、金星では“1年”に“2日”しかないため、毎日プロットしていくのに長い期間を要する。
・火星: しずく形
木星: 長円(楕円)形
土星
 8の字を描くが、北側のループが非常に小さいためしずく形に近い。
天王星海王星冥王星: 8の字形


天体の動きには複雑なことも多いのですが、
そこからは、自然な物理学的法則に従った
最も美しい動きを感じ取れるように思います。