2011年3月5日、標記セミナーに参加してきました。演題は次の3つでした。
1. サリドマイドからダイオキシンまで
~化学物質の生殖・発生毒性を追って~
安田峯生先生(広島大名誉教授)
・・・生殖・発生毒性学のここ50年の歴史について
2. 化審法ガイドラインの主な変更点とその背景
山本雅也先生(国立医薬品食品衛生研究所
安全性生物試験研究センター毒性部)
・・・化審法において来月から改正される点の概説と
その意義について
3. ゼブラフィッシュを用いた安全性・発生毒性オミクス研究
田中利男先生(三重大院・医・薬理ゲノミクス)
・・・新しい安全性試験法の可能性について
とくに2つ目の化審法についての講演は、化学物質の安全性がこれからどのように試験されていこうとしているのかを知ることができて、とても勉強になりました。
2. 化審法ガイドラインの主な変更点とその背景
化審法は、化学物質がヒトや動植物に対して長期的な影響を及ぼすことを防止する目的で、1973年に制定されたものです。とくに、環境中もしくは生体内で分解されにくく、長期的な毒性を及ぼし得る化学物質の製造や輸入、使用を規制することを目的にしています。
この化審法は今回改正され、これが来月(2011年4月)から施行されます。今回の改正点の一つに、通常の毒性試験「28日間反復投与試験」と生殖毒性試験とを併せて効率的に行うための「反復・生殖発生併合試験」の追加があります(OECD-TG422に該当)。私はこの概略を知ることで、化学物質の『毒性をスクリーニングする方法』の 1) 投与経路、2) エンドポイント、3) 回復期などについての考え方が整理され、とても勉強になりました。(詳細はここでは省略しますが、この分野に関わっている方は確認する価値があると思います。興味のある方はご連絡ください。)
また、これまで本法の制定(1973年)以前から使用されていた化学物質については、安全性の試験や使用等の規制がされていませんでした。改正化審法では、この既存化学物質についての管理制度等も追加されます。
さらに改正化審法では、化学物質による有害性と曝露量との関係を考慮したリスクの程度の推計(リスク評価)の必要性が強調されます。これは、化学物質の規制体系を『リスクベース』で実施するという国際的な流れに沿った動きであるそうです。
1. サリドマイドからダイオキシンまで(化学物質の生殖・発生毒性を追って)では、1) 発生毒性の種差、2) 先天異常学の原則、3) ダイオキシン受容体としてのArylhydrocarbon receptor (AhR)の発見 (Mimura J. et al. Genes to Cells 2(10): 645-54, 1997)、4)発生毒性の生じるメカニズムの考え方について概説されました。
また 3. ゼブラフィッシュを用いた安全性・発生毒性オミクス研究では、ゼブラフィッシュを化学物質の毒性スクリーニングに使用する利点(可能性)が、1) ImageXpressMICROを利用したライブ in vivo イメージング、2) 実験系のスケールダウン、3) 遺伝子のノックダウン効率の定量化という観点から紹介されました。ただし、この方法をヒトに対する安全性/毒性のスクリーニング法とするまでには、まだ多くの障害があるようです。
私は、この「生殖・発生毒性学東京セミナー」に3年前から何度か参加させていただいています。次回は今年の10月7日(金)に予定されているとのこと。またできれば参加して、私自身の研究方法を考える上での参考にしたいと思っています。