生殖発生毒性学の抱える課題

 私は、子どもをお腹に持ち得る女性(妊婦)の生活環境や生活習慣が、その子の健康に与える変化に注目しています。以前にも、ここでその考えを紹介しています。

胎内で将来の病気の原因が作られる(2009年11月2日)
幼少期の生活・栄養と生活習慣病(2008年10月31日)

 実際に、労働基準法の規程に基づく女性労働基準規則では、胎生期および新生児期の子どもに生じ得る有害な変化を防ぐために、「妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性を、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない」と定めています。
 これは、男性であれば必要な対処をしながら行う業務の一部を、女性に行わせることを禁じる規則です。その目的は、子どもに意図せず悪影響を与えてしまう可能性を回避することです。

 しかし、ここで「有害」と扱われる化学物質は極めて少なく、化学物質への曝露の悪影響を管理し切れていないのが現状であるようです。そもそも、「有害」とは何かという枠組み自体も未確立なのです。
 では、この現状を打開するためにはどうすれば良いでしょうか?

 まずは、健康影響に関する明確な証拠(データ)を蓄積するしかないのであろうと思います。そして、その次に多くの証拠をしっかりと取りまとめるしかないのが現実です。当たり前のことですが、重要なことかと思います。

 以上、2010年10月1日に参加した「生殖・発生毒性学東京セミナー」の報告を兼ねまして。とくに、奥田裕計氏の講演された「生殖発生毒性の有無の判断における悩ましいこと」の感想を中心に記載しました。



ナノ粒子の生体影響評価・生殖発生毒性評価の問題点(2012年3月30日)