「疾病の発生学的起源説」に関する知見の概説

 こちらは2009年11月7日(月)、日付の変わる直前です。
 今日は国際毒性学会CCT Meeting: PPTOXIIの1日目でした。4日間を通して議論される内容である "Roles of environmental stressors in the development origins of disease"(疾病の発生学的起源における環境要因の関与)について、6人の講演者によりその概説が示されました。
 この“環境要因”には、いわゆる環境問題だけでなく、食事などの栄養状態も含まれます。

 テーマが総説的に示されるため、参考に挙げられた論文は興味深いものが多かったです。以下、私が関心を持ったものについて、簡単な説明付きで記録しておきます。
 関連したテーマで興味深い論文・知見をお持ちでしたら、ご教示頂ければ幸いです。



 Gluckman & Hanson: Living with the past: evolution, development, and patterns of disease. Science 305: 1733-36 (2004)
 個体の性質は遺伝だけでなく、器官形成(発生)期(主に胎児期から幼児期)に置かれた環境に適応できる形に変化する (adaptive alteration) ことにより決定されることを示した総説。Barker and Osmond (Lancet 327: 1077-81, 1986) が疫学的に示したものを説明したものと言える。

 McMullen & Mostyn: Animal models for the study of the developmental origins of health and disease. Proc Nutr Soc 68: 306-20 (2009)
 テーマになっている疾病の発生学的起源説について、人以外の動物で報告された例をまとめた総説。

 O'Regan et al.: Prenatal dexamethasone 'programmes' hypotension, but stress-induced hypertension in adult offspring. J Endocrinol 196: 343-52 (2008)
 母親へのデキサメタゾン(アレルギー治療等に使われるステロイド薬の一種)の投与が、子どもの正常値血圧や、血圧の制御系に影響を与えることを示した論文。

 Youngson & Whitelaw: Transgenerational epigenetic effects. Annu Rev Genomics Hum Genet 9: 233-57 (2008)
 母親の置かれた環境により変化した子どもの変化が、その次の世代にも伝わるという知見についての総説。この現象を、エピネジェティクスな変化の経世代的な伝達により説明している。

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 学会初日だった今日は、午後3時から受付開始。早くに受付を終えて、まず発表ポスターを掲示した後に、インターネット接続の設定などをしていたら、どんどん参加者が集まってきました。
 午後4時から "Hors d'oeuvres"。フランス語で「前菜」。受付の後に、講演よりも何の発表よりも早く、料理を頂きながらの1回目の交流会が始めにありました。今日出会った日本出身の先生が、国内外のたくさんの先生を周りに引き寄せてくれたので、多くの先生方と話をすることができました。

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 午後9時に講演が終わった後、コーヒーや紅茶(とデザート)を囲みながら再びの交流会に参加し、午後10時前に会場を出て、私の宿泊しているホテルに帰ってきました。こんな時間に、私はデザートを食べる気にはなりませんでしたが・・・。逆に、「私の分がない!」と怒り出すご年配の先生もいらっしゃいました。公共の場で、しかも、結構エライと思われる先生・・・。

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 明日は私のポスター発表もあるので、ワインを片手にしっかりやってきます。


2009年12月5-15日 マイアミ(学会)とボストン