Nanotoxicology2010-2日目参加・発表報告

2010年6月3日、
Nanotoxicology 2010 Edinburgh
2日目の参加報告です。
何とか発表も終えましたので、後半に報告します。


2日目は、ケース・レポート(現象の一例)を
示した発表が多く、"nanotoxicology" の
一般的原理に迫る発表は多くありませんでした。
とはいえそれは、学会の一般口頭発表の
限界であるとも思います。

分野を俯瞰し、課題とその解決の糸口を提起したのは、
次の演題一つだったように思います。

Keynote
Nanotoxicology? You ain't seen nothing yet! The challenges of developing emerging technologies responsibly.
by Andrew Maynard (University of Michigan, USA)

 ナノ粒子の毒性学が、emergent riskの報告の蓄積になっていることを指摘。毒性学を論じる上で、当然ながらrisk-based definitionsの限界を意識すべきであると提案。
 Emergent risk(例として上がってくるリスク)に偏らず、plausibe risk(原理に裏打ちされたリスク)、substantial impact(実際的な影響)の各々を意識して、この学問を次のステップに進めようと提案した。


しかし、学会ではやはり、
いつも論文で名前だけを見ている人の声を
実際に聞くことができたり、話をしたりすることが
できること自体も、とても楽しいです。


Ken Donaldson (University of Edinburgh, UK)
 本学会での講演は、Asbestos-like effects of HARN in the pleural cavity: approaching an understanding.
 (Ryman-RasmussenらによりNature Nanotechnology 4: 747-751に論文発表されている内容。論文では、ある長さを持ったカーボンナノチューブが、中皮腫を引き起こすものとして有名なアスベストと同様に胸膜下組織に蓄積し、そこに組織学的変化を引き起こすことが報告された。)

Anna Shvedova (NIOSH, USA)
 本学会での講演は、Toxicity of carbon nanotubes to the lung: from mechanisms to regulatory consequences.(私は自分の発表の準備をしていたため、聴くことができませんでした。)

彼らの研究内容は、化学物質問題市民研究会
次の翻訳記事で紹介されています。
2006年の資料ではありますが、この分野の
重要な知見を含んでいるものですので、
よろしければご参照ください。

米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)
安全なナノ技術へのアプローチ:NIOSHとの情報交換
潜在的な健康への懸念
"Potential Safety Hazards" より

(2006年8月、化学物質問題市民研究会)


なお、先日ここで紹介したPeter Wick氏も、
学会2日目の午後に講演していました。
(こちらも、私は自分の発表の準備をしていて、
 聴くことはできませんでした。)
同氏の本学会での講演の演題は、
Accumulation and translocation of nanomaterials across the human planta.でした。
内容は、先日のここでの紹介記事のものと
同様であったようです。


さて、私は研究発表を、"New and emerging topics"
(新たに浮かび上がってきた話題)というセッションで、
午後5時ごろ行いました。

すべてを上手くはできませんでした。
しかし、できることをやり切って、
久しぶりに、とても清々しい気持ちです。
応援してくださった皆さま、
どうもありがとうございました。


これが私の、国際学会での初めての口頭発表。
しっかりと、記憶しておきたいと思います。
「やりたかったが、できなかったこと」も
多かったのですが、
そこから逃げたくないと思うからです。

できなかったこと。それは、
質疑応答の時間に頂いた質問に対して、
きれいに答えることができなかったことです。
英語で議論をする力が足りませんでした。

しかし、発表を通して伝えたかったことは、
最低限ですが伝えられたかなと思います。
"New and emerging topics" というセッションに
合わせたプレゼンも、最低限はすることが
できたと思っています。
(※ そういう意味で、英語でプレゼンをする上でも
 大切なのは、やはり英語力だけではないと思います。)

実は、次に英語でプレゼンをする機会が、
遅くても5ヶ月半後にあることが
すでに決まっています。(場所は国内ですが。)
自信は決してありませんが、
やるしかありません。


今回は、セッションの座長をしてくださった
Harald Krug氏(EMPA, Switzerland)が、
発表の前後に優しくコメントをくださり、
フォローもしてくださいました。
昨日のすべての演題が終わった後も、
様々なアドバイスをくださいました。

このKrug氏がしてくださった優しいフォローと、
うちの教授がしてくれているであろう期待を、
絶対に裏切りたくないと思います。


次に英語で口頭発表をするときも、
準備はきっと大変になるでしょう。
しかし、もっと力を付けて、
また必ず“帰ってきたい”と思います。




私も発表をさせて頂いた演壇は、
このようなところでした。
(この演者は、Ken Donaldson氏です。)



1日目の参加報告で、会場の建物の写真を
紹介しましたが、その前にある広場もきれいです。
ここには小さなチャペルがある他、
遠くに市街の建物を望むこともできます。