日本でもPM2.5監視始まる ~大気環境学会2日目~

 大気環境部会、PM2.5基準の指針値了承
 大気中の微粒子「PM2.5」の環境基準値が、2009年9月9日に告示されました。米国やEUに遅れる形になりましたが、日本でも“より小さい粒子の監視”が始まります。(以前には、案が出たときの記事『有害微小物質PM2.5の環境基準固まる』)を紹介しました。)
 告示された基準値は、年平均値で15 μg/m3、日平均値で35 μg/m3。世界保健機関 (WHO) の指針である年平均値10 μg/m3よりも緩いものですが、米国やEUよりも厳しい基準値が設定されました
(※2013年1月23日著者メモ:米国とは同レベルであったかもしれません。要確認)。小さな粒子は多く吸入してしまうと、気道(気管や肺)がダメージを受ける他、様々な健康影響が引き起こされるため、人の健康を守るためにはその粒子を少なくすることが必要です。
 今後はまず、この基準値をどのようにクリアしていくかが問題となり、現在横浜で開かれている大気環境学会でも一つの話題に上がっています。PM2.5がどのように発生し、それをどうしたら抑えられるかが議論されています。

※ 大気環境部会: 大気環境を監視・管理し、大気汚染による健康被害を防ぐための、環境省の中の組織。

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 大気中に存在して健康に影響を及ぼすものには、ガス状のものの他に、粒子状のものがあります。これを「浮遊粒子状物質 (SPM: suspended particulate matter)」といいます。SPMの中でも、健康により大きな影響を及ぼすのは、比較的小さな粒子であるといわれています。そこで、その小さな粒子の量を監視し、管理することの必要性が検討されています。
 PM2.5とは、SPMのうち、粒子の大きさが直径 2.5 μm 以下に相当するものです。このPM2.5の基準値が設定されたことは、できるだけ小さな粒子を管理していこうとする動きとして大きな前進です。

 しかし、まだ問題は多く残っています。

PM2.5の発生源は何か? または、どのように発生するのか?
・その発生はどのようにすれば抑えられるのか?

 粒子を減らしたいからといって、燃焼により発生する粒子(一次生成粒子)だけ管理すれば良いというわけではありません。ガス状成分が、オキシダント (Ox) により粒子状物質に変わる(二次生成粒子)可能性があり、Oxの発生抑制がPM2.5の対策につながるのではないか、などといった議論も今日の学会でありました。
 様々な可能性が議論されていますが、具体的な対策が確立されるまでにはまだ時間がかかりそうです。

 さらに、粒子状の大気汚染物質として監視すべきはSPMとPM2.5だけで十分か? という問題もあります。たしかに、PM2.5は質量にしてSPMの7割を占めています。しかし、自動車などの燃料の燃焼により発生する粒子は、もっと小さな粒子が多いとも言われています。“もっと小さな粒子”は、小さいために質量は軽いものの、反応性が大きく、健康影響も引き起こしやすい可能性があるといわれています。
 しかし、“もっと小さな粒子” は、その小ささ故に、どれだけ存在しているかなどの監視すら難しい(またはコストがかかる)といった問題もあるようです。

 この辺りの政策的な話を聞くことができるのが、大気環境学会のとても勉強になるところです。

 

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