解説記事の紹介:有害微小物質PM2.5の環境基準案固まる

有害微小物質PM2.5の環境基準案固まる
日経BPネット、渡辺雄二氏)

 ディーゼル車などから排出される粒子状物質PM2.5」。直径2.5マイクロメートル以下と、すでに規制されているSPM(浮遊粒子状物質)よりも小さく、肺の奥にまで達するため、肺がんや不整脈、喘息など重い健康被害につながる可能性がある。PM2.5は米国では既に規制されているが、日本ではようやく端緒についたばかり。環境省・中央環境審議会の専門委員会で、環境基準をどう設定すべきか2年に渡って議論が行なわれ、2009年5月にやっと基準案が固まった。これによって、疾病リスクを減らすことができるのだろうか?

1. 永らく野放し状態だった有害物質・PM2.5
 浮遊粒子状物質(SPM)のうちでもとくに粒子が小さいもの、すなわち直径が2.5マイクロメートル以下のものを「PM2.5」という。PM2.5はその小ささゆえに、鼻毛や気管支を通り抜けて肺の奥深くまで達するため、肺や循環器への影響を及ぼすことが分かっている。
 SPMについては従来から環境基準が定められていたが、これは実際には直径5~10マイクロメートルの粒子を規制するものでしかなく、それよりも小さいPM2.5については実質的に野放し状態だった。

2. 1996年、PM2.5の規制を求めた訴訟が起こる
 1996年に、喘息などの慢性呼吸器疾患に苦しむ都内の患者633人が「疾患は自動車の排気ガスが原因だ」として、国・東京都・首都高速道路会社、そしてディーゼル自動車メーカー7社を相手取って訴訟を起こした。

3. PM2.5が健康に被害を及ぼすことは国内外で証明されている
 東京大気汚染訴訟の和解条件として、国がPM2.5について検討会を設置し、環境基準の設定を検討することが盛り込まれた。

4. 健康被害はある、だが閾値(影響が生じない量)は不明のまま

 最後の項には、私なりに注意をしておきたいと思います。ほぼ間違いなく、閾値はないでしょう。理論的には、すべての人に対して絶対に影響が生じない量は、存在しないと考えられます。体の中は様々な調節系が働いており、小さな影響は気づかないうちに除去されるということが起こります。しかし、体のどこかに起こった変化が小さくても除去されず、残ってしまうということは、確率的に0になり得ないからです。
 閾値がないために、基準値を設定するのが困難であるというのは事実です。しかし、それを踏まえた上で、基準値を設定する際に閾値という考えを切り離す必要があるでしょう。

 

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