妊娠中の親マウスに酸化チタンを注射、子の脳などに異常(2009年2月1日、読売朝刊2面)
私たちの研究室からのレポートですが、読売新聞で記事になりました。年末にあった日本学術会議のシンポジウムに来てくださった記者のメモを、編集してくださったものかと思われます。記事にあるように、研究結果は、日本薬学会の環境・衛生科学系の専門誌Journal of Health Scienceに、本日付で掲載されました。
Takeda K et al:
Nanoparticles transferred from pregnant mice to their
offspring can damage the genital and cranial nerve systems.
Journal of Health Science 55(1): 95-102
一点補足をしたいのは、「(粒子を)食塩水に混ぜて」の部分。注射する溶液の性質(濃さ、浸透圧)を体内と同じにするために、生理食塩水を使っています。点滴などで行う処置と同じです。「食塩水」とだけ表現されているので、少し違う印象を与えてしまうかもしれません。
この記事で注目されるべきは、微粒子の影響が「次世代に及ぶ可能性がある」という点。現世代の健康はもちろんですが、次世代の健康を守ることも、現世代の責任だと考えています。
そして、研究結果を掴んでいる以上、研究者として果たさなくてはいけない責任は、その影響発生のメカニズムを明らかにしつつ、それを『防ぐ方法を講じる』ことだと思うので、頑張ります。
→ 続報:
「酸化チタンナノ粒子、マウスの脳の発達に影響を与える」(記事紹介‐2010年5月29日)
「ナノ粒子の胎児期曝露により生じる腎組織への影響」(2011年8月11日)
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ところで、この「本日付のJournal of Health Science」誌には、去年の夏にジョージと書いたレビューも掲載されました。
Xu G, Umezawa M, Takeda K:
Early Development Origins of Adult Disease Caused by Malnutrition and Environmental Chemical Substances.
Journal of Health Science 55(1): 11-19
つい数日前に、「Googleでこの論文の存在を知り、興味を持った」というメールをカリフォルニアのポスドクの方が送ってくれたりして、書いた甲斐があったなと思いました。
また、同じ号には研究室の先輩のレビューも載っており、思い出に残る雑誌になりました。
Ohmori K:
In vitro assays for the prediction of tumorigenic potential of non-genotoxic carcinogens.
Journal of Health Science 55(1): 20-29
教授にお願いしたら、余分に1冊購入してもらえることになったので、今から手元に来るのが楽しみです。
蛇足になりますが、同じく今日の読売新聞(2009年2月1日朝刊15面)には、「国内学術誌 存続の危機」という記事もありました。欧米の雑誌の方が、多くの人に読んでもらえるように思い、ついそちらに目がいってしまいますが、「海外誌に投稿しても、不透明な理由で不採用になったり、情報がライバルに漏れたりした経験を持つ研究者は多い」。日本にも大きな学会があり、そのそれぞれにも研究成果を発信する雑誌があることの意味を、忘れてはいけないと思いました。
同様の記事は、去年にも読売新聞に掲載されていました。
小林・益川両氏も論文発表、伝統の学術誌が赤字で廃刊危機(2008年10月9日、読売)