大学院生が、寝ても覚めても脳組織切片とにらめっこして、原稿ともにらめっこして仕上げた研究成果が、国際学術誌PLoS Oneに受理されました。
これで何かが終わったわけではありませんが、ひとまず。おのD、おめでとうー。
Onoda A, Umezawa M, Takeda K, Ihara T, Sugamata M:
Effects of maternal exposure to ultrafine carbon black on brain perivascular macrophages and surrounding astrocytes in offspring mice. PLoS One, accepted on Mar 12, 2014
Released on Apr 10 ⇒doi:10.1371/journal.pone.0094336 [PubMed]
大学2年生(だったよな?)の頃から研究室に関心を持ち、研究についておそらく人一倍、自分の頭で考え続けてきた大学院生の研究成果です。
それが形になったことは、もちろん、まず嬉しい。けれど、次にそれ以上に、ホッとします。
「アクセプトです! やりました!」
本人からのそのメールを、何度か読み返してうなずきました。考えて考えて、散々文章を推敲して得るこの感覚、大切ですよね。「これが、うめさんに赤を入れてもらった原稿です」って、3ヶ月前に分厚い束を見せられたときは、ちょっと驚いたけれど嬉しかったですよ。
※赤を入れながら私の書いたエントリの一つが、→こちら(U-runner流・論文作成チェックリスト2013)
「論文が通って、ようやく、研究している者として認められたような気がしました。」
そうですよね。私も6年前、初めての小さな論文でしたが “ここから少しはやっていける(勝負できる)かも?” と思ったことを覚えています。そして、その感覚も覚えておいていい “初心” の一つだと思います。
その大学院生が、論文書きを経験して3ヶ月前に書いたブログのエントリがあります(→こちら)。このURLを、「早くブログに書けますよーに」と付記してメモしておいたのですが、その日が来て良かったです。
そして、アクセプトされた昨日の、本人のエントリは→こちら。
わかってる。「意外にもあっさり」と言われてしまう返答だったことを、少しは申し訳ないとも思ってる。
この朝、「あ、通ったっぽい」とは、彼が後ろから近づいてくる足音でわかった。それはMinor Revisionの審査結果とは桁の違う、すごく嬉しいことだとわかってる。
それでも、「あっさり」のウラにある気持ちは、“予想していた” ことでも “ホッとした気持ちが勝った” ことでもないんです。
・・・あとは後日(笑)
●大学院生の論文が受理されました(2013)(2013年7月26日)
●卒業生の論文が受理されました―超音波式加湿器から放出される微小粒子について(2013年12月19日)
以下は、今回の論文の内容について少しだけ。
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これまで私たちは、妊娠中の母親の体内に超微小粒子(ナノ粒子、直径<約100nm)が入ると、出生児の脳に影響が及ぶことを示してきました。その上で、「いったいどの細胞に及ぶ影響が重要なの? どんな意味があるの?」という問いが浮かび上がっていましたが、その問いの1つ目に答えたのがこの論文です。
脳血管周囲マクロファージ(PVM)とそれに隣接するアストロサイトのphenotypeが、カーボンブラックナノ粒子(体重1kgあたり95μg、大気中超微小粒子のモデルとして使用)の2回の投与を受けた妊娠マウスの子で変わっていることが、はっきりと判ったのです。
この論文で示したPVMとアストロサイトの表現型は、ナノ粒子が次世代の中枢神経系に及ぼす影響を検証するエンドポイントとして、これまでに私が見てきた中で最も感受性の高いものであると言い切れます。
それを検証するために必要だったのは、まず組織切片の染色方法であったことは言うまでもありませんが、あとはひたすらの力技でした。
おつかれさんでした。
2014年5月16日追記
論文は⇒こちら。
この研究内容は、科学新聞2014年5月2日版1面でも紹介されました。
関連する研究内容が、学会発表時に表彰されました。⇒Our student won Best Poster Award in Nanotoxicology 2014 @Turkey(2014年4月27日)