かぜ薬を買う前に

 薬局に置いてあった「武田薬報」(2008 冬版)に、かぜ薬の「症状に合わせた薬の勧め方」という特集がありました。いくつか知っておくといいなと思ったことがあったので、少し紹介してみます。

 テーマは、
・ かぜを治すのはかぜ薬ではなく、体の力
・ 発熱は体の防御反応
・ かぜ薬と一緒に飲んではいけない薬
・ かぜと勘違いしやすい他の病気
の4つです。


●かぜを治すのはかぜ薬ではなく、体の力
 その通りですね。「かぜを治すのは、かぜ薬ではなく」、「体力を回復するための睡眠、休息、栄養をとることが何よりも大切」です。なかなか休めない人でも、仕事から「ちょっと早く帰る」とか、そういう所からでも変えれば効果はあるはずです。
 かぜのダメージでご飯を食べられない場合には、果物や、ゼリー状の栄養補助食品で栄養補給をするのも有用です。
 「かぜ薬は、かぜを治すのではなく、症状を緩和する(やわらげる)のに過ぎません。」

●発熱は体の防御反応
 かぜでは多くの場合に熱が上がりますが、発熱は、体の防御反応の一つです。そのため、解熱をしない方が良い場合があります。子どもの発熱でも、親は慌ててかぜ薬を飲ませるのではなく、安静にするだけにして少し様子を見た方が良いこともあるそうです。(でも、子どもが高熱を出した場合には必ず病院に行くべきです。)

●かぜ薬と一緒に飲んではいけない薬
 他のかぜ薬、痛み止め、鎮静薬(酔い止めなど)、せき止め、抗アレルギー薬などを一緒に飲まないでください。成分や効果の重複が起こり、過量服用などの重大な危険が生じます。


●かぜと勘違いしやすい他の病気

・インフルエンザ
 発熱が急に起こり、40℃近い高熱が出た場合などは、インフルエンザが疑われます。インフルエンザの流行しやすい時期や、流行している地域に行った場合には、これである可能性が出てきます。
 普通のかぜ薬ではなく、薬を飲むなら病院で抗ウイルス薬を処方してもらう必要がありますし(検査されて処方を受けられるはずです。)、何より非常に他人に移りやすいので注意が必要です。

アレルギー性鼻炎(花粉症など)
 くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状がある場合は、かぜではなくアレルギーの症状である可能性もあります。この場合、普通は発熱や咳はありませんが、花粉症では、ノドが痛くなる場合もあります。アレルギーの場合は、かぜ薬ではなく鼻炎用薬を選ぶべきでしょう。

・急性中耳炎
 細菌感染がのどや鼻から耳に移ってしまうと起こることがあります。子どもに多く、耳が痛くなるという特徴があります。熱が出たり、吐いたりすることもあるそうです。急性中耳炎の場合は、かぜ薬ではなく医師に処方される抗生物質を使うことになります。

A型肝炎
 かぜに似た症状を示すA型肝炎が流行している地域があるそうです(この本には、東南アジアとありました)。そうした地域から帰ってきた人などの場合には、A型肝炎の可能性もあるかもしれません。

 他にも、溶連菌感染症、細菌性肺炎、急性腎盂腎炎なども、かぜと勘違いするような症状が出ることがあるそうです。熱が高く、寒気がひどいときなどは、この可能性も考えられるとか。
 また、去年流行した麻疹でも発熱が起こります。発熱とともに、体に発疹が出る病気です。かぜ薬が効くはずもありませんが、それ以上に怖いのは、非常に伝染力が強い上に、大人になってから罹ると子ども以上に症状が重く出ることが多いことです。抗体を持っていない人は流行する前に予防接種をするべきですね(私も受けたいです・・・)。


 以前、「子どもが熱が出た」といってドラッグストアに駆け込んできたお母さまに応対した際に、こっちも焦ってしまいました。常備薬を買いにくる人とは違い、事が緊急ですから。子どもの発熱では、必ず病院に行くべきであることは言うまでもありません。しかし、そんな猶予もなくお母さまは駆け込んできたのでしょう。
 そんなときも、こちらが薬剤師としてまず冷静に対応しなくてはいけません。その中で必要な情報をもらい、一番良い薬を確実に進められるようになりたいと思います。

 

市販の風邪薬が使えない場合の例

 

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