自信を持って卒業してください(2019)

 3月に入ると、我らが葛飾キャンパスにも早咲きの桜が咲きます。



 うちの大学の卒業式を明日(19日)に控え、先週のうちに、研究室での謝恩会(追いコン)がありました。

 私は自分の今いる基礎工学部材料工学科の研究室に、2016年度から来てからこの3月で丸三年。なので、今季送り出す修士課程の修了生たちは、三年前、ちょうど私と同じ時期にこの研究室に入った学生たちでした。

 同じ時期に同じような「分からない」を抱きながら、一緒に学んできた仲間たち。彼らにとっては「材料工学科(専攻)」という分野での研究を通しての学びの期間に、普通だったら会わなかったであろう自分みたいな「薬学」出身の人にあうことになったわけで。

 常に研究室にいる異分野からの人に接して、「○○はこうやって説明しないと伝わらないのか」とか「何でそんなこと言う(知ってる)んだろう」などと思うこともあっただろうと思います。そんなことにも面白さを感じて、好奇心を示してきた人たち。大学院で取り組む研究の課題に、自分と違う強みを持つ人の視点をどうしたら取り入れたり生かしたりできるかを考え、実践してきてくれた人たち。
 もしかしたら、すでに彼らにとって「分野を異なる人との意見交換」は当たり前になり過ぎて、彼らの意識にも留まらない出来事になっていたかもしれません。

 でも、予備知識や専門が異なる人と遭遇し接することは、大学(院)という場所を出ると当然、もっと多くなるんですよね。

 そんな「遭遇」の一つを面白がって、毎日の研究室生活で楽しんでくれた彼らなので、この先にはこれまでよりずっと多くの面白いことに出会い、それを楽しんでくれるだろうと。そう確信しながら、卒業する人たちへの想いは今年も同じです。

 自信を持って卒業してください。

 そんな彼らと研究に取り組むことは、私にとっても至福の時間であり、こちらを必死にさせてくれる時間でもありました。彼らからの問いが常にアップグレードされてくる中で、こちらもそれにどう応えるか(注:必ずしも「答える」ではない)のゲーム。それを楽しめる時間に感謝すると同時に、私のような「異分野」の人を研究室に迎えてくれているラボの教授にも、ありがたく思うばかりです。

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 幸いにも、今季修了する修士院生のうち4人とは、昨秋以降に生体深部温度イメージング単層カーボンナノチューブの特異な細胞内挙動の論文を世に出すことができましたし、他に二つの論文がいま査読中です(きっとこれらがもうすぐ返ってくる。それまでに終えなければいけない仕事が・・・!!!)。さらにその後ろにも三つの原稿が準備中で控えており、先週の追いコンの翌日、そして今日また打ち合わせをしたところでもあります。それらを形にするのも、残る私ができる仕事。

 これらを世に出したとき(願わくは数ヶ月後以内)に、次にどんな課題に取り組んでいるかもまた楽しみです。その課題を今から想像するのは私の勝手ですが、きっとそのときには、いま想像できているものとは全然違う課題に直面しているのだろうと期待しています。

 最後に話は戻って、修了生が卒業にあたってしてくれた先週の追いコンでのご挨拶のこと。大学院での実践を通して学んだこととして、私が大切にしてきたことや示したいと常々思っていることを、もうこちらからの言葉がなくても端的に言い表してくれる場面があり、嬉しくも気持ちの引き締まるひと時でした。

 今ここに来るまでの経緯は問わない。今できることをやろうぜ。
 周りの人たちがやっていてもやっていなくても、自分はやりたいと思うこと、自分こそやってみたいと思うことをやろうぜ。
 目の前の評価の良し悪しのために言葉を選ぶのでなく、もうちょっと広い世界でいろんな人と関わる場面でも、自分が発したい何かを語れるようでいようぜ、と。

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