私は仕事で、学生の書いた英語を見ることが多いです。その内容は主に、学生の研究の内容を記したもの、つまり学術論文のようなものです。ここでは、英文を書くにあたり注意してほしいと私が学生に思うことをいくつかまとめてみます。
●安易に so を使わない
「そこで」「そのために」という意味を表そうとするときに so を使おうとする学生は多いです。しかし、学術論文で so をどれだけ見たことがあるでしょうか。
so は日本のいわゆる“受験英語”では頻繁に出てきたかもしれませんが、学術論文ではほとんど使われません。これは口語的な単語なのです。一方で、同様の意味で文語的に使われるのは therefore です。こちらは学術論文で、学生もよく目にするのではないでしょうか。
学術論文を読んでいて therefore や thus を目にしたら、その前後で文がどのようにつながっているか(流れているか)を少し意識してみてください。自身が英文を書くときに、それらをうまく使えるようになると思います。
●安易に on the other hand を使わない
また、「一方で」という意味を表そうとするときに on the other hand を使おうとする学生も少なくありません。私も以前はそうで、英文校正を受けたときに指摘されました。
これは、日本語の「一方で」は on the other hand よりも広い意味で使われているのが原因にあります。この意味を表したいときには、on the other hand よりも、but、however、yet、conversely などの語を使った方が良いと思われる例をよく目にします。これから初めて英語論文を書く方には、少し注意してもらえると良いと思います。
●「本研究/本論文」は "this" study/article でなく "the present" で
これも、私が英文校正で指摘を受けたことのある点です。this study と書いた場合、もしその直前に関連研究や先行研究に言及していると、"this study" が「本研究」なのか「直前に言及した先行研究」なのかが分からないことがあります。
「本研究」を示すのにすべて the present study と記す必要はありません。しかし、the present と書いてもくどくならないようでしたら、this とせずにそちらにした方が誤解や誤読は避けられます。
+++
英文を書く力は、英文を読んだ量にほぼ比例すると私は思っています。英文をしっかりと書けるようになりたい人は、是非多くの英文をしっかりと読んでください。(いま修士論文を書いている学生には、間に合わないアドバイスではありますが・・・。) もちろん、ただ英文を読むだけでなく「良い英文」を読むことが重要です。しかし、ある程度の量をしっかり読んだ経験がないと、目の前の英文が良いものか良くないものかどうかも判らないでしょう。まずはとにかく英文を、そしてできれば信頼できる人から勧められたものを多く読むことです。
これは、英文を書く力を付けたい人にも、英文を読んだり話したりする力を付けたい人にもオススメです。英文を読むだけでは、英語を聴く力はほぼまったく付きませんが。以上、ここでは英文を「書く」ときの注意点を挙げてみました。
※ “読んだら次に何を意識するか” については、こちらのChikirinさんのブログエントリに書かれていますので、参考に。⇒「おもしろいか?」&「わかりやすいか?」(Chikirinの日記、2013年12月17日)
「聞くだけ」「読むだけ」では、上達に時間がかかりすぎます。むしろ今回のように、超具体的に「書く練習」と「その振り返り」を試してみた方が役に立つんじゃないかな。
<参考-本ブログでの関連エントリ>
・英語論文の書き方-文法よりも構成を
・記事紹介「科学英語を考える」
・卒業論文(学位論文)の書き方
・U-runner流・論文作成チェックリスト(2013)
<その他の参考記事>
・英語で論文を書こうとする人へ(九州大・天野浩文先生)