論文紹介と研究報告のポイント

 研究室ではもうすぐ、今年度前半(夏休み前)のゼミが終わります。半期で改めて感じた、論文紹介と研究報告の注意点。休暇明けには意識を一段階上げたいと思いながら、少しまとめてみます。

●論文紹介で、何を伝えたいのかを明確に

 論文紹介では、ある方法の選択や結果の解釈について「どう考えているのか」という質問が出ることがあります。それに対して「本文に書かれていないので分かりません」と答える学生を目にすることがあります。が、それは違うでしょ。
 論文に書かれている内容を、その背景にある事柄と、使われている研究方法の長所と限界まで含めて紹介するのが「論文紹介」でしょ。

 「論文に書かれていることの紹介」なんて、聞いても何のメリットもありません。書かれていることを読むだけなら、原文を読んだ方が速く正確に理解できます。
 学生には論文紹介に、そのあたりも理解して臨んでもらいたいものです。

 それから、紹介する文献を、自身の研究の参考になるからという理由で選んだという言葉を聞くことがありますが、それも「??」です。
 論文紹介を含めプレゼンには、聞き手にどんなことを受け取って・持ち帰ってもらいたいかについて端的に(!)述べた上で、臨めるようになってもらいたいものです。


 ※)日本薬学会 生物系薬学部会の「学生コロキウム」では、論文紹介(ジャーナルクラブ)では以下の内容を含めるよう指針を設けています。参考までに。
 ・論文の新規性
 ・今後の展開に関する私見
 ・論文の問題点・不足する点に関する私見
 ・過去一年以内に出版された論文であること

 (先月、うちの大学院生による論文紹介も1つ公開されました。→こちら

●「実験方法」は目的ではなく手段

 自らの研究計画を述べるときに、使う予定の実験方法を並べること、それでデータを取るという予定だけを連呼してしまう人がいますが、それは違うでしょ。
 「なぜそのデータを取るのか」「なぜその方法でそのデータを取るのか」を考えて計画を組み立てていくのが、研究において重要な要素でしょ。と私は思います。つまり、何を目的としてその手段を用いるのか、ということに対して意識的であってほしいと思うのです。

 学生には、方法選択の根拠と、その方法を使ったからこそ描ける先の展望まで、自分の言葉で表現できるようになってもらいたいと思うところです。それは、そういった力こそが、大学院で経験するような「研究」以外の仕事にも生きると思うからです。

 おつかれさんでした。

 ※以前の関連エントリ:
 ・大学院で実験に励む学生へ(2013年5月17日)
 ・口頭発表のポイント(2010年9月28日)
 ・議論は目的でなく手段(2013年6月10日)