食事・運動と健康 ~国際炎症学会(WCI)2009 3日目~

沖縄の食事で若返り
D Craig Willcox氏
Society Sponsored Symposium
Inflam Res 58 Suppl2: S98-S99
"The Okinawa diet: a nutritional approach to modulating "inflammaging""

 老化の原因は様々なものが挙げられていますが、結局は、炎症誘発物質と抗炎症物質のバランスが重要であるようです。今日の学会の中で、「沖縄の食事は老化を防ぐ」という趣旨の発表がありました。
 沖縄の食事とは、野菜・果物がベースにあり、その上にピラミッド構造のように、魚、さつまいも、穀類、肉があるものと説明されていました。ピラミッド構造の一番上には、"Oil", "Herb", "Sweet"が「少し」と紹介されていました。
 この食事で大事な成分は植物性栄養素であり、これらが抗酸化作用も大きく良い効果があるそうです(植物や魚油に含まれるω-3脂肪酸、フラボノイド、ウコンのような生薬など)。 "Sweet potato"(さつまいもなど)がメジャーであることも良いのだそうです。
 研究は、血液中の指標や平均寿命などを食事内容と比較することで行われていました。これを、沖縄の大学とハワイの大学が共同で行っているのが、面白いなと思いました。

 発表に関する論文(フル・ペーパー)はこちら。

 Willcox DC et al. Life at the extreme limit: phenotypic characteristics of supercentenarians in Okinawa. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 63: 1201-1208 (2008)


運動習慣のある人は大気汚染の影響を受けにくい
Christopher S Stevenson氏 Society Sponsored Symposium
Inflam Res 58 Suppl2: S99
"Aerobic metabolism, inflammation
and susceptibility to complex diseases"

 こちらは、残念ながらフル・ペーパーにはなっていないようなのですが、内容が面白かったので紹介します。
 喫煙が、肺の疾患の発生に寄与していることはよく知られています。今日の発表では、慢性閉塞性肺疾患(COPD: chronic obstructive pulmonary disease)の発生率やその重症度と、その個人の運動量との間に負の相関が示されていました(データは、動物実験の結果で示されていました)。
 タバコを吸っていて、かつ運動もしている人がいるとは考えにくいのですが、タバコを大気汚染と読み替えれば、大気汚染による肺の病気の発生が、運動により予防又は改善できることが考えられます。
 呼吸機能や、低酸素状態に対する耐性など、様々なデータが示されていました。考えてみれば、運動をしていれば負荷に対する抵抗力が少しは強いだろうということは、想像できることではあります。研究では、運動量に遺伝的背景(つまり、そもそも運動が好きか嫌いかということ)が入ってしまっていたので、その要因を排除した研究も進められると面白いと思います。
 それでも、運動(もっと言えば、各々が気持ち良くかつ安全にできる運動)で人々を病気から救うことができるとしたら、とても素晴らしいことだと思いますね。

 発表者の最近の論文には、こんなものがありました。

 Stevenson C et al. Comprehensive gene expression profiling of rat lung reveals distinct acute and chronic responses to cigarette smoke inhalation. AJP-LCMP 293: L1183-L1193 (2007)

 

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