肥満は免疫能を変質させる

 肥満の人は感染症に弱いとされているが、それは免疫反応の弱さによるものだと報告が、米国のボストン大学歯学部のSalomon Amar博士らにより、昨年末に発表されました。[1] インターネット上でもニュースが流れたので、知っている方も多いかもしれません。

 肥満の人に歯周病が多いということは、以前から報告されていましたが[2]、Amar博士らは、歯周病菌に対する免疫防御反応に注目し、肥満の例とそうでない例とでこれを比較したのです。

 博士らは、高脂肪食により肥満になった(が、糖尿病にはなっていない=空腹時血糖は上がっていない)動物に対して歯周病菌を接種し、その反応を通常の動物と比較しました。
 その結果、肥満の動物では歯周病菌がより多く増殖する一方で、接種を受けた動物の免疫応答は弱いという結果が得られたのです。肥満の動物では、免疫応答において重要な役割を果たすサイトカインであるTNF-aやIL-1a、IL-1b、IL-6、さらに種々のケモカインの発現の誘導が弱いことが示されています。

 栄養失調だけでなく、栄養過多でも。食生活によって、病気に対する抵抗力は大きく変わる、ということなのでしょうね。



参考文献
[1] Amar S, Zhou Q, Shaik-Dasthagirisaheb Y, Leeman S. Diet-induced obesity in mice causes changes in immune responses and bone loss manifested by bacterial challenge. Proc Natl Acad Sci U S A 104: 20466-71 (2007)
[2] Saito T, Shimazaki Y, Sakamoto M. Obesity and periodontitis. N Engl J Med 39: 482-3 (1998)

 

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