IgE抗体なしに喘息発作を引き起こすIL-33

今朝、このような見出しの記事が新聞に出ました。
ぜんそく発作に強く関係、新たな物質突き止める
(読売新聞、2010年10月19日)

元の論文は、これでしょうか。

Yagami et al. (2010)
IL-33 Mediates Inflammatory Responses in Human Lung Tissue Cells.
J Immunol. 6 Oct 2010 [Epub ahead of print]
(発表は国立成育医療研究センター研究所の
 Yagami氏、Orihara氏ら)

この論文では、サイトカインIL-33の気道上皮細胞と
肺微小血管内皮への作用が報告されています。

なかでも個人的に興味深いのは、
コルチコステロイド(*1)が気道上皮に生じる反応を
抑制することはできるが、血管内皮における
反応に対する効果は、限定的であったという点です。
IL-33により気道内皮に誘導される反応に
気道上皮とは異なるものがあり、
その一方にはステロイドが効くが、
もう一方には効かないのであるそうです。


さて、IL-33が肺組織でどのような機能を果たすか
ということについて、以下に説明したいと思います。
IL-33がIgE抗体(*2)非依存的に、
(つまりIgE抗体がなくても)喘息発作を
引き起こす機能がある可能性については、
これまでにも報告がありました。

以下、その報告について紹介します。

(注)
*1: コルチコステロイド
 喘息治療に用いられる薬。
 とくに、急な発作をすぐに抑える必要があるときには
 優れた効果を発揮します。
 その長期的な使用については否定的な意見も多く、
 より優れた薬剤の開発が求められています。
*2: IgE抗体
 アレルギー反応を引き起こすものとして
 よく知られている物質。肥満細胞を活性化し、
 花粉症薬のCM薬でよく出てくる「ヒスタミン」などが
 肥満細胞から放出されるのを促進します。

T細胞やB細胞を持たないRag-2欠損マウスを
用いた研究では、このマウスにIL-33を作用させると、
・杯細胞(気道で粘液を分泌する細胞)の増殖
好酸球(喘息発作を引き起こす細胞)の浸潤
が促進され、
・気道過敏反応の顕著な誘導
が認められたという論文があります(*4)。
(つまり、B細胞がなく、IgE抗体が産生されない
 という条件下でも、IL-33が気道過敏反応を
 引き起こす可能性があるのです。)

*4:
Kondo et al. (2008)
Administration of IL-33 induces airway hyperresponsiveness and goblet cell hyperplasia in the lungs in the absence of adaptive immune system.
Int Immunol 20(6): 791-800


一点、気道における好酸球の浸潤の仕方など、
喘息に伴う反応がマウスでは他の生物種と違う点には
注意が必要です。

しかし、ここで紹介したような知見は、
喘息を始めとする種々のアレルギー性疾患の
発症メカニズムを明らかにし、
新たな治療法開発の助けとなることが期待されます。