会話力の身に付けを支えるということ

 身近な人に悩みの相談をできない中学生が、インターネットで見知らぬ個人に悩みを相談するうちに、直接会うようになった末に殺されてしまった事件があります。帰れる家のない中学生が、泊まる場所を深夜じゅう探し回った末に、目を付けられた大人に殺されてしまった事件があります。

 例は多くないかもしれません。ですが、そんな中学生に相談できる場があったり、逃げ場的に泊まれる場所があったりしたら防げた悲劇や、損なわずに済んだかもしれない子どもの生存権について考えています。

 この土日は、日本幼少児健康教育学会の大会に参加していました。場所は兵庫の西の端、赤穂の関西福祉大学。広い空とのどかな雰囲気の下で、子どもの発達・成長と教育の課題に独特な視点で研究に取り組む先生方のお話が印象的でした。(大会長の服部伸一先生のお人柄も、その印象を一層強くしました。)



 「妊婦健診を受けなかった母親と子どもへの支援」 という特別講演をしてくださった井上寿美先生も、関西福祉大学の方。哲学的でありながら、問題解決への示唆を提示する調査研究の話を聞くことができました。「スマホ時代を生きる子どもたちのために」 という特別講演をしてくださった竹内和雄先生(兵庫県立大学)の状況整理と分析も圧巻でした。

 子どもの教育の課題の一つである、人間関係の構築とその基になる会話力。もはや電話でもメールでもなく、子どもたちがLINEで連絡を取るようになったときに初めて遭遇する場面にどう対応するのか。新しい技術を使わないという規制でなく、その文化を肌身で知る人とどう協調するのか。

スマホ時代到来~今、大人が知っておきたいこと("130603~" 連載中、竹内和雄先生)

 子どもが会話力を身に付けていく中で、人間関係のトラブルを回避する力をいかに得てもらえるのか。事例を個々に見ると、完璧のない子育ての大きな問題にならない悩みの中にも、大きな問題事例と共通するものがあると感じます。
 眼差してくれたり助けてくれたりする人が 「いるのにいない」 と認識してしまうことの袋小路。極端な事例だけでなく、思春期などに経験する人は少なくないと思うのですが、その袋小路を避け、自らを大切にする力をどう身に付けてもらえるのか。とくに、それがうまくいっていない人をどう支援できるのか。簡単に答えの出ない問題ですが、考えさせられます。

●井上寿美・笹倉千佳弘「妊婦健診未受診妊産婦による新生児虐待の回避要件:虐待傾向のある母親の特徴をふまえて」(「機関リポジトリ」から全文を閲覧できます。)

 ここにも社会が有する “子育ての責任は親にある” という第一義的責任論の問題など、様々な問題が絡み合うようです。その様々な問題を私がまだ解釈し切れておらず、キーワードの羅列になってしまいますが、2日間で見聞きしたものを備忘録を兼ねて、ここに書き留めておきたいと思ったところです。