ヨコ軸でつなぐ日本史と世界史~世界はいっしょにまわってる



 標記の本、「はじめに」で池上彰さんはこう書いています。

 ・高校で習った世界史はつまらないものだった。
 ・それは、日本との関連が不明瞭で、歴史の論理を理解するものではなかったからだ。
 ・でも、日本も他国も、同じ地球の上であり、一緒に回ってきた。
 ・歴史を、世界史と日本史という縦軸で別々にしないで、同時代の横軸で見ると、新鮮な世界が見えてくる!


 私はこの休暇中に、池上さん監修の『世界はいっしょにまわってる ヨコ軸でつなぐ日本史と世界史』を読みました。この本は同時代の日本と他国の出来事を左右に並べ、簡単に説明していて、とても面白いです。

 たとえば、天明の大飢饉以降の寛政・天保の改革と、ヨーロッパで起こったフランス革命には、地球規模での気候変動が背景にあったという説があること。社会の仕組みを変えるためには、人には制御できないほどの大きな変化がきっかけとして必要なのかとも思わされます。

 (以下、リンクはいずれもWikipedia日本語版。)
天明の大飢饉(1782~88年)
ラキ火山(Lakagígar)噴火(1783~84年)
寛政の改革(1787~93年)、松平定信
フランス革命(1789~99年)
天保の改革(1830~43年)、水野忠邦

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 古代に目を移すと、中国の『三国志』の時代(3世紀)、日本は卑弥呼の時代でした。卑弥呼は、曹操の子孫の治める魏に使者を派遣しています。

魏(三国)
卑弥呼

 日本ではヤマト政権があり古墳が造られていた頃、ヨーロッパでゲルマン民族の大移動が始まって中世が始まり、ヨーロッパで十字軍の遠征があった頃に、日本では院政の始まり・武士の台頭・武士政権(鎌倉幕府)が成立したということが、この本から読み取ることができます。
 そして、同時期の日本史と世界史とを比べるのはそれだけでも楽しいことを、この本は気づかせてくれます。

ヤマト王権古墳時代(3~7世紀ごろ)
ゲルマン民族の大移動(375年~)
十字軍(1096年~)
院政(1086年~)、平氏の盛衰(1160年代~80年代)

 さらに、例に挙げられているのはエリザベス1世徳川幕府成立。

エリザベス1世(在位1558~1603年)
戦国時代(1570年ごろ~1600年ごろ)

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 たしかにな、と思います。

 日本への鉄砲伝来を一つとっても、その伝来が日本史に変化を与えたことは事実ですが、より広い世界は当時も大きく動いていたことでしょう。たとえば、鉄砲を日本に輸出した側のポルトガルの目論見や、他のヨーロッパ諸国の人たちが危険を冒してまで日本と貿易をしようとした理由も併せて知る方が、より歴史に興味を持てるかもしれません。
 フランシスコ・ザビエルによる日本へのキリスト教伝来も、日本と近隣諸国や貿易国との関係についても、日本の視点ではなく相手の視点から歴史を理解できたら面白いでしょう。
 これらの例の背景まで、この本では紹介されていませんでしたが、私が改めてそういった点に興味を持つきっかけになりました。

 また、ここでは触れませんが、この本はページの半分以上を19世紀以降の近代・現代史に割いています。日本では近代・現代の歴史教育が極めて弱いと思うので、この本でのページ配分に私は好印象を持ちました。

 この本を読みながら、自分なりの歴史年表を作るのも面白いかもしれません。ぜひ、子どもにも読んでほしい1冊です。