薬学会発表報告‐これまでに行ってきた子宮内膜症研究と今後の展望

 2010年3月28日、日本薬学会第130年会にて研究発表を行ってきました。

・28CI-am07 『実験的子宮内膜症病変モデルにおける細胞接着分子の発現動態』 (梅澤ら)
・28P-pm333 『実験的子宮内膜症病変モデルにおける細胞外マトリックスの発現動態』 (斎藤、梅澤ら)

 私たちはこれまでに、子宮内膜(※1)の自家移植(※2)により、この移植片に接触した組織で起こる変化を観察してきました。この変化を理解することにより、子宮内膜症という女性の疾患の発症メカニズムを明らかにし、この疾患の克服につなげたいと考えて研究を行っています
(Umezawa et al. Life Sciences 84: 832-837, 2009; Cytokine 43: 105-109, 2008; reviewed in Inflammation and Regeneration 30, in press)

(※1)子宮内膜: 子宮の内腔を形成し、妊娠のときに受精卵が着床する組織。
(※2)自家移植: ある組織を同一個体の他の部位に移し、埋め込んだり貼り付けたりすること。

 子宮内膜症の病変組織では、免疫反応が活性化されており、アレルギー性の炎症反応が生じています
(Uchiide et al. Fertility and Sterility 78: 782-786, 2002; Ihara et al. Fertility and Sterility 81 Suppl 1: 819-823, 2004; Umezawa et al. Cytokine 43: 105-109, 2008; Kyama et al. Reproductive Biology and Endocrinology 1:123, 2003; Flores et al. Fertility and Sterility 87: 1180-1199, 2007)
 我々は、その炎症反応に先行して起こる変化を解析し、病変形成の引き金となっている反応の探索を行いました。その結果、子宮内膜の自家移植により、この移植片に接触した組織に極めて速く接着分子のシグナル伝達系が活性化されていることを明らかにしました。
 子宮内膜症の病変組織における接着分子の発現動態についてはすでに報告がありましたが、これが子宮内膜の移植後非常に早い段階で変化することは大きな発見であると考えています。病変形成の早期の段階を観察・解析することは、臨床研究の実施だけでは極めて困難です。これを解析することができたのは、in vivoの病態モデルを用いて基礎研究を行ってきたことの一つの成果であったと考えています。

 次は、このデータを活用して子宮内膜症の克服法を考えなければいけません。そこで私たちは、この病変を抑制する食品成分を探索したいと考えています。
 今回の薬学会では、食品成分の効果について研究をされている方から多くの話を伺うことができました。次の研究に活かせる情報を多く頂くことができたと考えています。どうもありがとうございました。また、私たちの発表を聴きに来てくださった人たちにも心より御礼申し上げます。


 今日から新年度ですね。学生の身分から離れ、研究員の立場として迎える初めての年度が始まります。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
 ただ、前年度最後の数日間であった薬学会期間中、ほとんどの時間を立ったり歩いたりして過ごしていたためか、大きな疲労を持って4月1日を迎えてしまいました。今日は布団をかぶって仕事をしています。在宅ワークです。

 研究室の新年度は、公式には4月5日に始まることになっています。それまでには、体調を万全にできると思いますし、しなくてはいけないなと思っています。
 新入生(新卒研生)の皆さんも(ほとんどの人は見ていないと思いますが)、どうぞよろしく。