筑波鉄道「筑波線」の跡を走ろう(その1、土浦〜筑波)

 茨城県南にはかつて、筑波鉄道筑波線という鉄道が土浦から、筑波山の周りの山筋の西麓に沿って真壁〜岩瀬まで通っていました。総延長40.1km。列車が通っていたのは1987年までで、今はつくばりんりんロードというサイクリングロードになっています。

 10歳の人の「駅の跡が面白そうだからサイクリングしてみたい」というリクエストで、行ってきましたそのりんりんロード。

 ただし、自転車好きの大人と違って初心者小学生には、一度での40km走破も往復走行も無理があります。と思って調べたら、かつて筑波線の「筑波駅」のあった筑波山口から土浦までは、自転車も乗せてくれるりんりん号という関鉄バスがありました。
つくば霞ヶ浦りんりんサイクルバス(関東鉄道)


 土日でも筑波山口⇔土浦間を走ってくれるのは3本しかない上に(他の時刻のバスは自転車非対応)自転車は先着2台しか乗れないという条件付きではありますが。それでも、大人は自転車で往復する人ばかりだろうから何とか乗れるはずと考えて張り切って筑波山口に向かいました。


 土浦から出るJR常磐線の線路に並んで、北に向かう短い線路跡が西側に。それがかつての筑波鉄道のものなのだとか。


 新川の小さい橋を渡るとすぐに、旧真鍋駅跡。1981-87年は信号所だったという場所で、今は関東鉄道本社のバスの車庫になっています。駅の廃止が廃線より早かったためか、ホームの跡も知らないともう分からないくらいです。


 そのわずか200m先に、次の新土浦駅跡。単線の線路に一つだけ置いてあったらしいホームが、国道354号(旧水戸街道)と国道125号(バス通り)の間に、端の階段も含めて残っています。


 国道6号バイパスを西にくぐるとすぐに、虫掛駅跡。土浦市街を抜けて、ここから一気に桜川に沿った田園風景をまっすぐ突き進む眺めになります。写真にあるのは10歳の人の自転車で、私は横をRunして進みました。

 なお、このりんりんロードにあるいくつかの駅跡は今、駐車場のある休憩所になっています。この虫掛にも駐車場があり、元々はここに車を停めてサイクリングをスタートする予定でした。が、10時すぎではもう駐車場が空いておらず、予定を変更して土浦駅近くの有料駐車場から今回出発したのでした。そのために、廃線跡を始発の土浦駅から進めたので良かったといえば良かったのですけれど。


 虫掛駅跡のすぐ西で常磐自動車道をくぐると、次は坂田駅跡。ここはホーム跡がほぼ無いので知らないと気づくことはないのですが、雑木林側の車道に出ると、移設された古い駅名標が道端に立っています。


 が、これも知らなければ気づくことはないのでしょう。私たちは、10歳の人の予習の成果で立ち寄って見つけることができましたが。「さかた」の駅名の下に、両隣の駅を示す「ふじさわ ⇔ むしかけ」の文字も見えるような、見えないような。


 次いでの藤沢駅跡。色づいた木の葉がきれいでした。周りには昔からの集落も。


 田土部駅跡。向こうに見える跨道橋は、茨城県道200号(藤沢豊里線)。ここを過ぎると土浦市からつくば市の小田へ。茨城県道53号(つくば千代田線)の跨道橋をくぐるのですが、


 その橋脚に、昔の筑波鉄道筑波山口の筑波駅に向かう)と今のつくばエクスプレス秋葉原から今のつくば駅に来る)の車両などをきれいに描いた絵があって思わず足を止めました。

 藤沢あたりからここまでは、筑波山が南隣の宝篋山に隠れて見えなかったのですが、小田まで来ると宝篋山の西に回って再び筑波山が見えてきます。2年前にも来た「『神皇正統記』起稿の地」小田城跡を過ぎると、


 すぐに小田駅跡。


 だんだんに迫ってくる筑波山をワクワクしながら眺めつつ、


 新土浦駅の跡以来、約15kmぶりに交わる国道125号の下をくぐる所には、手形で描かれた色鮮やかな筑波山が。


 国道をくぐるとすぐに北条駅跡。かつては複数のホームに加え、小さな貨物線複数もあった駅とあり、駅の跡も他よりだいぶ広く見えます。営業当時は、筑波線の中で土浦駅に次いで2番目に利用者の多い駅だったのだとか(出典:Wikipedia「常陸北条駅」)。

 ここまで来ると、筑波山口のバスターミナルのある筑波駅跡まであと数km。


 1937-43年頃のわずか6年ほどだけあったという、常陸大貫駅の跡。廃線の40年以上前に営業を止めた駅とあり、ホームの跡もなし。


 自転車と乗れるバス「りんりん号」の時刻が迫る中でも、足を止めて見ないわけにはいかない秋の筑波山を眺めながら、


 着きました! 無事に、筑波鉄道「筑波駅」跡。つくばエクスプレスつくば駅とはまったく違う駅で、今は「筑波山口」のバスターミナルがある所です。

 休みながら3時間弱かけて走って来た20kmを、帰りは「りんりん号」に自転車も乗せてもらって50分で土浦まで戻りました。自転車好きの大人なら往復できてしまう距離でも、10歳の人にとっては片道行った後に座ったら爆睡まっしぐらの筑波路でした。

 今ここに列車が走っていないのは残念ではありますが、数十年前より自転車も自家用車がずっと性能が良くなった現在。たとえ20分に一本列車の運行があったとしても、好天の日に乗る人はなかなかいないのかもしれません。その廃線跡を、今こうして舗装の良い自転車道として楽しめるのはありがたいことだと思います。

 なお、10歳の人は疲れた体で「栄養とってすぐ爆睡」をしたということで、なんちゃってアスリート気分を少し味わったかも?(いや、そんなの関係ないかも。)


 走破ルート。濃い青色が自転車 & Runで走ったりんりんロードで、薄い青色の道が帰りのバスルートです。今は紅葉を、春はおそらく桜の花も楽しめる気持ちの良いルートです。皆さんも小学校高学年の人たちも、よかったら是非に。(つづく