私の若手仲間が執筆した本『高校生からのバイオ科学の最前線』(日本評論社)が、2年弱で初版を売り切り、無事に増刷されました。増刷にあたり若干の修正が効くということで、先日久しぶりに全体を読み直していました。
そして先ほど、編者・片桐さんのご厚情でいただいた増刷号が無事に届きました。
執筆から3年以上が経った本ですが、一読者の視点で改めて読んでも面白い本です。今のバイオ研究を牽引する分野の一つ、再生医学やiPS細胞研究について、幹細胞発見のストーリーからしっかり書かれていたり。そういった研究の基礎となる遺伝子工学研究の進展と実際が、分かりやすく解説されていたり。後半では、幹細胞や遺伝子工学の進展がもたらす新たな可能性と課題まで書かれています。
中ほどにある番外編「合成生物学に魅せられた大学生の物語」も読み応えがあります。大学で自分は何か学べているのかな、何を学びたいんだったかな、と内心悶々としている人たちには、ここからでも読んでもらいたい。これからの中学・高校生を応援する大人たちにも是非読んでもらいたいです。
「物事には段取りがある。まずは何をしたいかを明確にする。それを人に提案して同意を求める。そしてちゃんと結果を出す」から始まり、「物事に“一生懸命に”取り組むことと、“真剣に”取り組むこととは違う。君たちが“真剣に”学ぶことを、心から応援したい」という言葉。真剣に取り組んで得たものが、その人自身を変えてくれることはきっとあるんですよね。
このストーリーの主人公・松島ゆりこさんは仮名ですが、若手仲間の私には当然誰がモデルなのかがすぐに分かります。彼女の表情を想像しながらこのドキュメンタリーを読み返せるのも幸せなことです。
私は執筆に時間を割けず、一つの章のための若干の情報収集しかできませんでしたが、著者一覧に名前を入れてもらっています。それはともあれ、同世代がこうやって分かりやすい本を書けるというのは、素晴らしいことだなぁと心から思います。私の身近には、一人で参考書1冊(数冊?)を書いちゃってる人もいますが。
増刷された本書が、また多くの人に届きますように。
『高校生からのバイオ科学の最前線』
生化学若い研究者の会・著
片桐友二・編、石浦章一・監修
日本評論社
(2014年8月出版、2016年8月第1版第2刷発行)