上信越の国道と5月初旬の長野

 地図を見ていて、数字や道筋を眺めていると不思議に思うことがあります。群馬から長野~上越までを結ぶ上信越道で言うと、ここ。



 上り線を走っていると、大きな山もないのに松井田から富岡の方に向けて、信越線から離れてクッと南下するところが目立つのです。我が家は縁あってよく長野に行くので、ここも頻繁に通るところ。最近は子どもの荷物が減り新幹線で行き来しますが、昨年の5月は車で行ったので、常磐道の南の端から長野まで高速道路に国道や鉄道がどう交わっているのか、見ながら旅程を進んでみました。

 常磐道谷和原ICから、外環道、関越道、上信越道を目指していざ出発。

●「294」から常磐道へ@谷和原
 我らが守谷を通る唯一の国道は294号。誰がどう見ても茨城県の取手から始まっていながら、政令上は千葉県の柏(呼塚)を起点としていることで有名。茨城と栃木を縦断して那須まで至り、北は白河、猪苗代を通り会津若松まで続く立派な道ですが、私たちは早々と谷和原で別れて常磐道へ。

●柏で交わる16号
 谷和原から上り線に乗るとすぐに利根川を渡り、柏IC。ここは、横須賀から富津までぐるっと東京を囲むように結ばれた、国道16号との交点。と思いきや、16号も富津~横須賀が「海上区間」とされているという秘密があり、横浜を起終点とした環状道路という扱い。政令上の決まりというのはかくも不思議なもの。
 不思議を抱えたまま、東武アーバンパークラインと名を変えた野田線をくぐり、江戸川を渡り、武蔵野線をくぐって三郷に向かう。

●「298号」と二段構造の外環へ
 常磐道の終点である三郷JCTから外環道へ。一般道(国道298号)を併設した外環道の「自動車専用部(高規格幹線道路)」を西に進む。この道が南に東京湾岸までつながると、首都高速6号(とくに三郷線)の恒常的な渋滞が減ると思うんだけどな。渋滞を防ぐ交通インフラの整備は、疾病予防の大気汚染緩和にも重要です(新興国の都市部や世界の多くの大都市に行くと、特にそれを実感する)。

 草加の手前、八潮から謎の国道4号バイパス「東埼玉道路」が地図に現れる。春日部の庄和インターまでつなぐことを目指しているらしい。ふーん。次いで日光街道“現道”の埼玉県道49号、東武スカイツリーラインと名を変えた東武伊勢崎線国道4号草加バイパスと、南北に伸びる主要幹線を順に越えていく。
 さらに、埼玉高速鉄道(赤羽から埼玉スタジアムまで、2001年=サッカーW杯開催の前年=に開業した鉄道)を越え、東北道の起点である川口JCTで国道122号を越える。浦和でも京浜東北線国道17号を越え、埼京線と新幹線をくぐり、美女木JCTで再び17号(新大宮バイパス)と交わり、和光で国道254号(和光富士見バイパス)を越えてと外環は進む。
 ここで交わる幹線の多くは、それぞれ栃木や群馬、国道17号や4号に至っては新潟や青森まで伸びる大動脈である。新幹線は北陸のほか、2016年3月末には北海道にまで伸びた。この交わる道たちの行き先に想いを馳せるのが、都市の環状道路を走る醍醐味とも言える。なお、和光で越えた「254」とは、長野に向かうときにはこの先長い付き合いになる。

●大泉から関越は254と東上線八高線沿いに
 大泉JCTから関越道へ。所沢では、おそらく埼玉の人しか知らないであろうと思われる国道463号に出会う。川越で終点間近の西武新宿線の他、前出の国道16号と再会した後、鶴ヶ島圏央道と国道407号に会う。この国道は、成田やつくばで馴染みの深い408号と一番違いであるが、区間は足利~太田~熊谷~坂戸~入間ということで2つが出会うことはない。坂戸では東武越生線を越える。

 東松山で、実はここまで並走してきた国道254号、さらに東武東上線と交わる。この辺りは埼玉の丘陵地帯のため坂が多く、関越道屈指の渋滞区間。次いで花園(深谷)で荒川を渡り、国道140号、さらに秩父鉄道と交わる。関越から長瀞秩父の玄関口だ。荒川は外環で戸田から和光に抜けるところでも越えているので、この旅程で2回目の出会い。
 この荒川は、支流の入間川などと共に東の国道17号・JR高崎線と、西の国道254号・東武東上線のエリアとを分けている。大きな川を挟んだ対岸どうしでは、調べたら面白い文化の違いなんかも見つかるかもしれない。調べてないけど。なお、この荒川は熊谷付近で利根川と合流していたこともあったという。水量の多い河川2つ。この平野の治水も大変だったのだろうと想像されるところだ。

 次は本庄で国道462号と交わる。462号は佐久から碓氷峠の南の十国峠を越え、伊勢崎まで行くマニアックな道だが、本庄と伊勢崎を結ぶ坂東大橋は利根川を越える交通の要衝らしい。407-408と同様に、462号も連番の国道463号(埼玉県内のみ)と交わることはない。
 直後に上越新幹線のガードを一度くぐると、関越道から上信越道が分かれる直前に上里SAがある。5月にフジの花が咲くここの小さな広場で、「関越道六車拡幅記念」の記念碑を見つけた(下の写真、左奥の白い棒がそれ)。
 関越道がもしここまで片側二車線だったらとか、常磐道がもし千代田石岡までしか開通してなかったらとか。そんなことは想像しただけで恐ろしい。



●元・鉄道の難所を急勾配・急カーブで
 藤岡SAで西に進路を変え、いよいよ上信越道が始まり、八高線を越えて上越新幹線のガードをもう一度くぐる。高崎から安中・横川に向かう国道18号や信越線はまだ北だが、上信越道はやや南に進路をとる。安中のある碓氷川沿いでなく、国道254号や上信電鉄沿い鏡川沿いを西進するためだ。それが冒頭の地図の部分。
 ここを吉井、富岡、下仁田と進む。この辺り、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が2014年6月に世界遺産登録される前後には、それに関連する幟がたくさん立っていた。下仁田町に入るところには、もちろんネギの絵がシンボルとして描いてある。

 下仁田の東端で国道254号沿いから離れ、横川に向かう国道18号を追うように進路を北にとる。特徴的な形の妙義山を見ながら、「峠の釜めし」横川へ。峠の釜めしは、軽井沢に向かうJR信越線が碓氷峠を越えていた時代に、機関車交換(超急勾配の碓氷峠を越えるため)で特急を含め停車時間の長かった横川駅の名物駅弁。米1合を炊けるサイズの益子焼に詰められている。また、横川では鶏めしも美味で、うちの長男は2歳のときからお気に入り。

 上信越道は横川前後で急勾配を上った後、碓氷峠に向かわず碓氷バイパス(国道18号)よりさらに南を西に進む。横川SA~佐久平PA区間は、勾配だけでなく急なカーブも右に左に連続するので、運転初心者は絶対にやめた方がいい。とくに東=群馬方面に向かうときは、トンネルを抜けた直後に急カーブしながら急勾配を下るなど。
 この登り勾配の後に約4kmの八風山トンネル。この中で上信越道最高地点(932m)を迎え、群馬県から長野県に入る。

浅間山八ヶ岳を見ながら千曲川右岸を松代・須坂へ
 長野県に抜けると、小諸に広がる浅間山の裾野からの空の広い景色が迎えてくれる。南には八ヶ岳連峰。佐久で北陸新幹線と交わり、小諸に入るところで中部横断自動車道を分け、しなの鉄道(昔のJR信越線、~1997年)、さらに「日本ロマンチック街道」の一端を兼ねる国道18号を越える。日本ロマンチック街道は、上田~小諸~軽井沢~沼田~草津~日光の観光地を結んでこう呼ばれている。
 この命名は、欧州で有名なドイツ・バイエルンヴュルツブルク(Wurzburg)~フュッセン(Fussen)を結ぶRomantische Strase(Ferienstrase)をモデルにしたらしい。なお、西日本には鞆の浦(福山)~備中松山城(高梁)~井倉峡(新見)~三朝温泉~倉吉・北栄を結ぶ「ロマンチック街道313」があるようだ。
 小諸からは国道141号が小海~野辺山経由で山梨・韮崎へ、重複する国道142号が軽井沢と下諏訪へ伸びる。

 上田に入ってすぐ、大屋から南に国道152号が伸びる。GW頃にモモの花が満開になる武石に向かうのがこの道。立科の白樺湖に行く道というのは知っていたが、調べてびっくり、伊那~飯田を通って浜松まで伸びていたとのこと。山間を細かく曲がりくねりながら太平洋側まで達しているのである。
 上田の中心市街には松本から来た国道143号、長野原から来た国道144号が達している。上田から菅平高原の方面に上がっていくのもこの144号だ。ここまでの花園IC、小諸、上田で140~144号との連番出会い制覇(と言いたいところ、上信越道自体は141、143号とは交わっていないが)。

 あと、これも上信越道とは交わらないが、上田駅から千曲川を渡って西の塩田平~別所温泉に向かう、上田電鉄別所線。緑に赤の鉄橋が映える。



 その先の更埴で、並行してきた国道18号以外に、松本から冠着峠越えで篠ノ井線・麻積川沿いに来た国道403号に出会う。篠ノ井線は長野から名古屋方面に向かう主要幹線と思いきや、険しい峠道を通るのだそうで、踏破してみたい。なお、篠ノ井線が松本から犀川沿いに来ないのは、犀川が細かく蛇行しながら深い渓谷を作っているためで、それに沿っては線路を引けなかったからだとか。こっちの道(犀川に並行した国道19号)も気になる。

 更埴から上信越道国道403号とともに、千曲川の右岸(東側)を進み長野市の中心を寄らずに須坂に向かう。以前は同じ側を長野電鉄屋代線が走っていたが、それも2012年春までの話。この線は長野市に直接つながっていなかったのが、経営的に致命傷になったらしい。
 上信越道国道403号と須坂で交わった後、大町~白馬から菅平~長野原~高崎に至る国道406号と、今も現役の長野電鉄長野線(長野~須坂~信州中野湯田中)を越える。この辺り、千曲川沿いの風景はGWに八重桜も満開で美しい。

信州中野の東もGWに見どころの盛り
 小布施の先、北陸新幹線と交わったところで信州中野。そこには国道403号の他、上越~中野~山ノ内・志賀高原~長野原に至る国道292号がある。あの日本国道最高地点(標高2172m)の渋峠を通る「292」である。この渋峠も白根山も圧巻の風景
 山ノ内のりんご畑は、GWに花が満開。咲き誇る花に、向こうの山の麓まで薄白く染められた景色は格別だ。



 湯田中の少し向こうの、地獄谷野猿公苑に昨年行ってみた。ここでは人による餌付けが禁止され、人慣れしつつも野生のままの猿を見ることができる。3歳児(当時)が一瞬の隙に大人の目を離れ、何の気になしに猿の背中を触った(※禁止されている。危ないし。)ときの一瞬の焦りは忘れられない。猿も一瞬すごい表情を見せたが、相手が子どもと知ってかすぐにまた背を向けていた。



 この地獄谷は、山間の小さな観光スポットだが英語の案内が優れている。遊歩道入り口には猿座(Enza)というカフェがあるが、英語メニューを前面アピールしている他、メニューも寿司、フライドポテトやチキン、ソフトクリームにもレモンやソーダがあったりと、妙に外国人旅行客の受けを狙っているのが面白かった。麺も長野なのにそばでなく「ラーメン(Ramen)」だし。



 この道中から美しい山々が見える長野。りんご畑なんかもすごくいい。是非他国からの観光客を、山のある日本の美しい風景にばっちり案内してほしいものだと思う。2015年は北陸新幹線の長野~金沢延伸と善光寺御開帳、2016年は上田に縁のある真田氏の大河ドラマが放映されるとあり、この辺りは引き続き盛り上がっているところだ。(私たちは、上田に滞在するときに毎回泊まる温泉宿が予約できなかったり…。)

信州中野を越えたら黒姫・斑尾・野尻湖が長野県の北端
 中野で千曲川を渡り、飯山線と国道117号を越える。この2つはともに、長野~中野から飯山、栄、津南、十日町小千谷、長岡といった豪雪地帯に向かう。両線を囲む地形がどのようなものなのかも、一度は必ず見てみたいものである。
 なお、更埴から中野まで上信越道と並走した国道403号も、山ノ内から志賀高原を越えて国道117号とともに飯山に向かい、須川峠・上越を回って小千谷に達したところで再び117号に会う。

 上信越道の方はというと飯山を前に西に向きを変え、黒姫、斑尾、野尻湖と役者揃いの信濃町に入る。最後は北しなの線(2015年3月以前のJR信越線)、そして再度の国道18号と並行しながら新潟県妙高に向かう。妙高の向こうには、戦国時代に上杉謙信や景勝が本拠としていたた春日山真田信繁も行き来した上田と上越も、今はこうして結ばれていることを最後に確認しつつ。

 長野県の北端で、今回の調査はひとまずおしまい。どうだろう、周辺地域とのつながりを道でまた知ると、その土地をまた訪れたくなるのは私だけだろうか。