育児と仕事との両立

 「ラボ以外でできる仕事はラボ外ですること。」 そう割り切る力が、今まさに私に問われています。

 私は子育てを経験して、時間の使い方や価値観がまったく変わりました。「どのタイミングで、どのくらいの時間をフリーにしておけばいいのか。」 子育てをしたいと思うことは、この問いに答える価値を無にするチャレンジであるとすら思います。

 「できるときに、やれることをする。」

 言葉にすれば当たり前にも聞こえるこのことが、子育てと何かとを両立するための唯一の方法と言っても過言ではないでしょう。
 逆に言えばそこさえ割り切れば、自分自身のための時間を持つことを選ぶこともできます。自分にやれることが何かを見極めて判断する力を、これまで以上に求められているとも感じます。

+++

 『実験医学』(羊土社)2013年7月号のオピニオンコーナー(p.1814)に、私たちの書いた原稿が掲載されました。

●「必要な理解と支援 研究と育児の両立に向けて」(梅澤雅和・谷中冴子・豊田優 =生化学若い研究者の会 キュベット委員会)
(*1)

 この稿では、研究者を取り巻く環境の現状と課題に焦点を絞り、主に「大学・研究機関による保育施設の充実」の提案と「周囲の理解」について書きました。

 子育ての仕方も時間の使い方も「人それぞれ」であることは、言うまでもありません。しかしそのために、何をどう書いたら良いのか、何かを書いたら誰かに迷惑がかかることはないかと、悩んだ部分も小さくありませんでした。
 それでも、少し言い過ぎなのではないかという意見も受け止めつつ、次の文章を最終稿にも入れさせていただきました。

 「限られた時間で価値を生み出せなければ、プロとして研究者を名乗れないといっても過言ではない」 と。
 (それは、子育てをしている場合に限らないんですけどね。)

 そう思いながら前号のオピニオンコーナーを読み直したところ、次の文章に改めて目が留まりました。

 (とくに米国を例に挙げ)「『子どもが理由で今日の仕事ができない』ということはあっても、『子どもが理由で全体的に仕事量が減る』ということは許されません」
 (渡辺玲さん「日米比較!working motherはどっちが楽?」、実験医学2013年6月号より)

 この気持ちは、子育てと仕事とを本気でやりたいと思うときに、忘れてはいけないものであると痛感します。

 ※こちらも是非!!― 若手研究者の結婚を支える3つのこと」(谷中冴子、羊土社『実験医学』2011年11月号Opinion)
 ※こちらも参考に― 連載「若手研究者の結婚・子育て」(若手キャリアプラン検討会、共立出版蛋白質 核酸 酵素』2004年8-10月号)

+++

 私はいま大学で、次世代の子どもの健康のための仕事をしています。同時に、次代を担う子どもの成長を支える「育児」が、社会の中でもっと評価・理解されるよう願っているところです。
(*2)

 (*1)執筆にあたりご支援を戴きました、共著者の2人ならびにキュベット委員会の皆様に深謝申し上げます。
 (*2)そのためにも、育児をしながら仕事に励む人が増えてほしいと思います。